2017年08月27日

精神の運動神経、黒田喜夫の場合

昨日は現代詩人会の総会(早稲田奉仕園スコットホール)に出掛けた。冒頭に細見和之さんの講演「60年後に読む、黒田喜夫「ハンガリヤの笑い」」があり、それから総会(会則変更について多少波乱あり)、名誉会員に推挙された安藤元雄さんの小スピーチ(……薄味でなく濃い詩を……)を聴き、懇親会では吉田義昭さんの歌もあった。
細見さんの講演は1956年10〜11月に発生したハンガリー事件に詩人の黒田喜夫がいかに即座にヴィヴィッドに反応して力強い詩を書いたかを紹介するもの。スターリンが死んでスターリン批判がなされた後になお、このような強権的なソ連の他国軍事介入が起こるという事実にはリアルな政治の(支配欲望の)実態を見る思いがするが、その意味合いに鋭敏に自分たちの運命を投影する詩人の言葉も皮肉に富み凄みを帯びている。最後の八行:

 信じてくれ
 賢い同志たち
 これは可笑しい本当に可笑しい
 ぼくは哄笑った ぼくの屍体が
 笑うほかない屍体の身震いで
 辛いチャルダッシの
 笑い声でいっぱいな
 ハンガリヤで

(池田康)
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2017年08月12日

湯浅譲二さんの米寿の会

昨日、作曲家の湯浅譲二さんの米寿を祝う会がトーキョーコンサーツ・ラボ(新宿区西早稲田)であった。前半はミニコンサートで、テナーレコーダーのための「プロジェクション」(演奏=鈴木俊哉)、天気予報所見〜バリトンとトランペットのための(橋本晋哉&松平敬)、内触覚的宇宙III〜虚空〜(三橋貴風&吉村七重)、チェロのための「Congratulation for the 70th birthday」(堤剛)の四曲。いずれも立派な(がつんと来る)演奏で、音の思いがけない配置、ユーモアの過激な導入、音楽創造の原理を求める精神、など湯浅作品を特徴づける諸面を改めて感じることができた。後半の懇親会では翌日という誕生日のお祝いもなされた。体調を崩して晩冬の頃からしばらく入院しておられた由で、しかし相当回復され、まだ本調子とまではいかないようだがしっかりと立って挨拶されていた。
「洪水」20号の特集論考で、宗教的な(スピリチュアルな)音楽というものについてあれこれと考えてみたが、「現代アートを古代アートにつなぐ」という文句を最近思いついた。たまたまラジオで「現代アート」という言葉が話され、ならば「古代アート」という言葉もありうるわけだと思いつき、やや軽い響きになるが、古代あるいは有史前の芸術衝動の源に立ち返る心のベクトルの意味で、上記のような標語とあいなったわけだ。古代アートが生成するような心意識の次元に現代アートを根づかせよ、と。湯浅さんの「内触覚的宇宙」というタイトルも、宇宙の内側から宇宙に触れるという原始の形而上学的指向が感じられ、古代アートの蘇生が幻視された。
(池田康)
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2017年08月10日

低気圧の通信

低気圧が近づくと身体の具合がおかしくなりがちと言うが、台風5号が近づき本州を襲った日、腰が痛くなった。これを低気圧のせいにするのは正しいかどうかわからないが、重い荷を持ち上げて運ぶような重労働も激しい運動もしていないから、おそらく規格外に強烈な低気圧の悪戯だろう。動くなという風神からのメッセージだったろうか。肉体にも肉体なりの神秘はあるのだ。鈍そうなこの身でも異変があったのだから、今回全国で腰痛をかこつ人は相当いたのではないだろうか。いまはもうほぼ回復した。
「洪水」20号の在庫があと60冊となった。ご入用の方は早めにご注文下さい。
(池田康)
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2017年08月07日

ガジュマルの若葉

ガジュマルの掌に乗るほどの小さな鉢を買い求めて毎日眺めている。成長がよくわからないようにも見えるのだが、よく観察するとつやつやした緑の小さい葉っぱが出ていたりする。新しい緑との出会いが嬉しい。
沖縄の若手の歌手、上間綾乃が6月に出したアルバム『タミノウタ 〜伝えたい沖縄の唄』を聴く。すぐに、これはもう真打だと感じる。もちろん大ベテランの歌手ならば、情念をいかつく厳しくこぶしに凝結して島人の生活の秘密やエニグマを表現する技をさらに強力に発揮するかもしれない。しかしこれはこれで十分に熟していて美しく表情豊かだ。「ひめゆりの唄」は初めて聴いた(必聴)。このCDを通して南の島の真言の滝に打たれる時間はこの夏の最良の納涼であり鎮魂涼となるだろう。
(池田康)
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2017年08月02日

ニュースひとつ

このたび取次の地方小出版流通センターと契約し取引していただけることになった。今までは草場書房に発売元をお願いしていたが、これで今後の刊行物に関しては洪水企画で独自のISBNをつけて発行&発売をすることができるようになる。より一層の意気込みで本を作っていきたいと思う。
ついでに最近の見聞を少し。
映画「海辺の生と死」(越川道夫監督)を観る。戦争末期の島尾敏雄・ミホ夫妻の出会いのエピソードをベースにした作品。劇場は大盛況だったがそれだけのことはあると思われる映画としての存在感だった。フィルムを流れる時間が独特で、テレビドラマではありえないような息の長い間とテンポで作られていて、質感が立ち、物語の神秘性につながっている。満島ひかりの演技を超えた噴火を観る映画。奄美の島の唄もたくさん聴ける。
フランスの女優ジャンヌ・モローが亡くなったとのこと。たまたまルイ・マルの「恋人たち」(これもストレートな恋愛映画)をDVDで観たばかりだったので、感慨一入。
(池田康)
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