2019年01月09日

ジョニ・ミッチェルを聴く

昨年読んだAyuo 著『サイケデリック・ボーイの音楽遍歴』に影響されて、年末年始をはさむようにしてジョニ・ミッチェルを聴いている。レコード店で探したら初期アルバム十枚組BOX『The Studio Albums 1968-1979』が信じられないような廉価で売り出されていたのでそれを手に入れてCDをとっかえひっかえかけている。
この人の曲で世の中に広く知られているものと言ったら「Both Sides, Now」「The Circle Game」だろうか。どちらもとてもいい曲で、それぞれ2番目と3番目のアルバムに入っている。4番目のアルバム『Blue』は世評高いようで、タイトル曲「Blue」や「River」はとても味わい深い。ここまで、フォークソングの様式を維持しての、着実な上り坂の幸福な充実ということなのだろう。ただ、門外漢の私が虚心坦懐にここ十日ほどの間に聴いた限りでいうと、一番最初のアルバム『Song to a Seagull』に何故だが特別の愛着が沸く。妖精的でなにも考えずに自在に音を動かす天衣無縫さがなんとも素晴らしい。第2作、第3作と時が経つにつれ、いろいろ建設的な「考え」が入ってきて硬さや頑張っている感じがわずかずつ出てくるような気がするのだ。それももちろん創造者が通るべき必然の道なのだろうが、歌い始めたばかりの開花期の無垢の天衣無縫さは捨て難い。初期の純粋を尊ぶこのような偏った嗜好はいかがなものだろうと疑問に思い少し反省もするがとりあえずありのままをここに報告しておこう。
5番目〜8番目のアルバム達は、まだそれほど聴いていないが、どう言ったらいいのか、ロック色やジャズ色が前面に出てきたりしているが、試行に留まるとも言えそうで、過渡期なのかもしれない。「You Turn Me On, I'm a Radio」はポップチューンとして好ましいチャーミングさを持っている。逆に言えば、ポップスとして消化しやすい形に結実していない試行も多くあり、これは彼女の創造力の果敢さの表れだろう。
9作目の『Don Juan's Reckless Daughter』では、異国のリズムが鳴り、ワールドミュージックへの挑戦の兆しが感じられて、驚かされた。ポール・サイモンの『グレイスランド』が出るより十年早い時点でジョニ・ミッチェルがこんなことをしていたとはと、クリエイティブな人間の先見の明に敬意を覚える。「チャールズ・ミンガスを偲んで」という添え書きのついた10作目『Mingus』はジャズ色の濃い、風で揺れ動きそうな柔らかい構造の音楽が試みられている。5曲目(tr.9)の「The Dry Cleaner From Des Moines」はとりわけ気持ちよい。
このBOXSETにはなにしろ10枚のアルバムが入っているので、そう何回も聴いているわけではなく、今後さらに聴き込んだらまた別の見解を持つようになるかもしれない。Ayuoさんの本によればジョニ・ミッチェルはギターのオープンチューニングの技法に長けていた人だということなので、その視点から聴くとまた違った聞こえ方になるのだろうか。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 17:44| Comment(0) | 日記