2019年03月13日

あれかこれか

AかBかという選択は人によって違ってくることが多いだろうが……
ハンカチはきちんと畳んでポケットに入れるものと思い込んで半世紀を過ごしてきたが、最近ハンカチをくしゃくしゃにしてポケットに入れておく蛮行が気に入っている。くしゃくしゃのハンカチはなぜか心安らぐ。拭きやすいという現実的利点もあるし、こういう無秩序がちょっとぐらいあってもいいんだよと教えてくれるような気がするのだ。もちろん外では人目もあるしポケットが異様にふくらんでしまってみっともないから家の中でしかやれないが、それだけでも十分OK。騙されたと思って一度試していただきたい。
イヤホンはいくつか持っているが、もっとも好んで使うのは昔からあるような平べったいボタンを耳にはめ込む形のもの。型番がわからないのだがパナソニック製のものを愛用している。現在主流になっている、ゴムの筒を耳穴の奥に突っ込む形のものはぴったりのフィットが窮屈すぎてわが耳にはよろしくないようだ。音の広がりの感じも従来のボタン型の方が好き(耳の骨に低音の振動を伝えてくるものは耳が痛くなって嫌い)。ただすぐポロリと耳から外れるのが難点だが。
プリンターインクはメーカー純正品か他社のエコノミーインクかという切実な問題は、私の過去の苦い経験からすると値段がかさんでもどうしても前者を選ばざるを得ない。悪くするとプリンターがプリンターの用をなさなくなる。エコノミーインクを使うのは高級ウイスキーの瓶に水で割った安酒を詰めるようなものだ――いやこれはわが独断的私見。
娯楽映画か芸術映画かという問題はケースバイケースで、CGの華麗な魔法もけっこうだけれど本物のローソクの炎の揺らめきの方が妖艶だったり、かと思えば家庭劇のありきたりの泣き笑いよりも群衆の衝突の派手なスペクタクルの方が見応えあったり、まさしく予見不可能で、運を天に任せて両方面試すしかなさそうだ。
当時は娯楽だったか芸術だったかわからない(もちろん両方だったのだろう)シェークスピア劇の中で「to be or not to be」とハムレットは悩んだ。市井の埃にまみれてうかうかと暮らす庶民としてはもちろん何のためらいもなく「to be」でしょうという自信満々の答えになるわけだが、百万秒に一秒の割合でどっちでもいいよなと思ってしまう瞬間もあって恐怖する。ハムレットの天秤が真のクエスチョンとして見えてしまう危機的瞬間。そんなときはポケットからくしゃくしゃのハンカチを取り出して、なんだこの無秩序は、力が抜けるよと慰めてもらうのが手軽でよい。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 17:33| Comment(0) | 日記