2019年11月27日

「二十四の瞳」のことなど

「みらいらん」次号で小特集「童心の王国」を組むことになっているその連想で、そういえばまだ見てなかったなと思い、DVDで映画「二十四の瞳」(木下恵介監督、1954)を見た。昭和3年から始まる、小豆島が舞台の物語。中心となる大石先生(子供たちからは小石先生と呼ばれる)を高峰秀子が演じるのだが、キャストの名前が並ぶ順から言うと子供たちが主人公のようだ。今から百年近く前の、都会から遠く離れた地方の生活が映し出されるわけで、眼福ともいえるシーンがたくさん出てくる。とりわけ和式の着物に身を包んで走り回る子供たちがまぶしく、なにか羨望のような気持ちを抱いた……自分もあんなふうに着物を着て田園風景の中で遊ぶ子供時代を送りたかったなと……なにとぼけたこと言ってるかと怒られることはわかっているが。戦中の暮らしづらい様子も描かれ、終戦まで話は進むのだが、十二人の子供たちのうち男の子の何人かは出征して戦死し、墓がずらりと並ぶという、学校ドラマとしては破格の大きな悲劇で幕となる。大石先生は、いい先生なのだが、テレビドラマの学園ものでよくあるようなスーパーヒーロー教師ではなく、それぞれの子供の苦境に際してもとくに卓抜な解決策を出して助けるわけでもなく悲しげに見守るだけの、どこにでもいそうな普通の人間として描かれていて、そのさりげなさが物語を堅牢にしていると思われた。
話が飛ぶようだが、「みらいらん」次号の〈対話の宴・野村喜和夫の詩歌道行〉でゲストとして登場して下さった阿部日奈子さんの新詩集『素晴らしい低空飛行』(書肆山田)の前半で描かれるのも、どこにでもいそうな(自分と同じだと共感できる)はぐれ者の処世の四苦八苦であり、小説でも描きにくいだろう生活のありふれた底部を露出させたところが特色となっている。この本については今回の対談で詳しく語られるので、ご期待いただきたい。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 17:03| Comment(0) | 日記