新倉俊一さんが8月23日に逝去された由、八木幹夫さんが知らせて下さった。享年91。(新倉家への電話はしばらくの間おひかえ下さいとのこと)
7月に弊社で詩集『ビザンチュームへの旅』を作ったばかりだったので、驚き、茫然とした。詩集が完成したとき電話でお話ししたのだが、お元気そうで、とても喜んでおられたのが思い出される。詩集制作の打合せのとき、自分の最後の詩集だからということを言われて、どういう気持ちでそんなことをおっしゃるのだろう、半分は冗談なのだろうかといぶかしんだのだったが、結果的にその通りになった。清らかな詩の奥津城をご自身で用意して逝かれた、みごとと言うほかない。コロナウイルス感染症の社会事情で直接お会いすることが叶わなかったのが残念だ。
6篇を集めた組詩「ヘレニカ」から「ニケ」を引用紹介する。
ニケ
鴎は風に翼を任せて
自由に空を翔けていく
もし風が私の運命なら
風の力が駆るままに
水半球を自在に私も
駆け巡るだろう
私は風の器または竪琴
たとえば天界に昇る
ベアトリーチェのように
体と離れた霊を知らない
風が好むところに吹く
ように私の霊もまた
気ままに私の体を駆って
四海を支配する
自然はいつも豊かな
神の祭壇であり私は
その自由な巫女だ
私には過去と未来はない
つねに生気に満ちた
現在があるだけだ
今日も風は私を駆って
新たな海と立ち向かう
(池田康)
2021年08月28日
訃報・新倉俊一さん
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