2022年03月29日

「現代詩手帖」4月号

「現代詩手帖」4月号に寄稿しましたのでご覧下さい。「詩人はオペラである」という変なタイトルのエッセイです(「横断する表現」というリレー連載のコーナー)。なお、この号の特集は「新鋭詩集2022」となっています。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 12:17| 日記

2022年03月19日

歌の話に心揺さぶられる

地震のお見舞いを申し上げます。
うちの辺りは震度4くらいだったのだろう、寝ていてひどく揺れるのを感じて恐ろしかったが、家具やものが倒れたり落ちたりはなく、胸をなでおろした。なぜ地震はあんなにも突然にくるのだろうか?
この冬から春にかけて、オペラ関連の本を図書館で借りて読んでいたのだが、三澤洋史著『オペラ座のお仕事 世界最高の舞台をつくる』(早川書房)は生彩があって面白く、読んでいてとても気持ちよかった。著者は指揮者で、主に合唱指揮をなりわいとしていて、新国立劇場などで活躍する。多くのオペラの演目を解説するわけでも、オペラ史を系統的に語るわけでもなく、自分の歩いてきた道のりを振り返りながら印象深い出来事を語っていくという、自由でラフな構成なのだが、音楽家が書いてもなかなか語られないような音楽上の機微がさまざまに取り上げられ、説明されていて非常に興味深い。おもに歌手(と合唱団員)がどう声を作り唱うかの話であり、発声しにくい音域でテノールはどう裏声を混ぜ合わせてなめらかな歌声を実現するかとか、言葉をどう歌声で発声するか、言語がちがうといかに言葉と旋律の関係が変わってくるかとか、バスを強く厚くすることがどれほど重要かとか、いずれも教えられることが多い。指揮棒の打点と実際に音が発せられる瞬間との間のわずかな時差についても非常に悩ましい問題として率直に語られていて、かねてから不思議に思っていたことなので、やはりそうなのかと納得したところもあった。なによりも、一曲を創造する現場の動き(政治、駆け引きもふくめて)が生々しい。どうしようもなくぐしゃぐしゃだったアンサンブルが指揮者に導かれてみごとな演奏に化けるさまの描写は、読んでいるだけで音楽が聴こえるようだ。
戦争で世界が激震するのは恐怖そのものであるし、現実の地面が大きく揺れるのも願い下げだが、精神性と創造性に溢れた文章に心が揺さぶられるのはありがたい経験だ。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 10:32| 日記

2022年03月11日

ナポレオンでさえ

ウクライナの情勢はきびしいままのようで、遠い地のことながら、戦時下の非常な過酷さが伝わってくる。
久生十蘭には戦時下のパリなどを舞台にしたものが少なくなく、その陰鬱と物騒が作品の根底の味わいとなり、こういう時勢だと戦争の空気のリアリティにふれたくついつい読んでしまう。「勝負」「巴里の雨」など(それぞれ河出文庫の『十蘭錬金術』『パノラマニア十蘭』所収)恋愛ものではあるが、風雲急を告げる時代描写がいたく生々しい。作者自身がヨーロッパに行っていたとき軍事物資関係の仕事に携わっていたのか、その方面にとてもよく精通している感じがする。ほかにも、「公用方秘録二件」は二つの国の角逐が小さなシーンで鮮やかに描かれて面白く、「爆風」は空襲の直撃をいかにのがれるか、その知恵についての冷静な記述に引き込まれ、「犂氏の友情」はウクライナ人であるロシア人!?が出てきて、とんでもない展開に驚愕する。
今のウクライナを見ていると、陰鬱や物騒の雰囲気はもちろんあるが、勇敢とか覚悟とかいった言葉も思い浮かぶ、これはおそるべきことだ。なにか大きなプラスを得るという意味での勝利はむずかしいかもしれないが、できるだけ納得できる形でサバイバルを果たしてほしいもの。
先月24日にNHKBSで放映された映画「戦争と平和」(1956、キング・ヴィダー監督)を見ると、200年前のナポレオンの頃の戦争がどんなふうなものだったかがおよそわかるとともに、侵略という暴力的外交の行為が(攻める側の思考・欲望が単純な分だけ)無理や危険を伴うものだということを教えられる。ナポレオンでさえ敗れる、それは尤もなことわりだ。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 11:10| 日記

2022年03月05日

図書新聞3534号

図書新聞3534号(3月12日号)に、野村喜和夫・杉中昌樹著『パラタクシス詩学』(水声社)の書評を寄稿しました。ぜひご覧下さい。(池田康)
posted by 洪水HQ at 10:36| 日記

2022年03月01日

『亡骸のクロニクル』が日本詩人クラブ新人賞に

二条千河詩集『亡骸のクロニクル』(洪水企画)が第32回日本詩人クラブ新人賞を受賞しました。おめでとうございます。


追記
当ブログのコメント欄は閉鎖いたしました。ここのところ悪質な書き込みが頻発しておりますので。あしからずご了承ください。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 08:00| 日記