2023年07月21日

「現代短歌」9月号(98号)

「現代短歌」9月号が完成、私も寄稿しているのでご覧下さい(書評=佐々木漕歌集『天飛む』)。
なお、この号は特集「寺山修司没後40年」が組まれている。寺山と塚本邦雄の関係を考える瀬口真司「最後の読者」、寺山と尾崎左永子の関係を考える嵯峨牧子「二人のシンクロニシティ」、歌人・今野寿美と俳人・佐藤文香の対談「寺山修司は寺山修司をいかに創作したか」など。
特集で紹介されている寺山の短歌や俳句を読んでいると、彼の言葉との格闘での暴れぶり、そのなかでの細心さ、抒情と虚構の兼ね合いの卓抜さを強く感じる。
 向日葵の顔いっぱいの種かわき地平に逃げてゆく男あり  (歌集『空には本』より)
(池田康)
posted by 洪水HQ at 16:19| 日記

2023年07月12日

通信の神秘

生野毅さんが今週末の15日(土)18時から、「新・剪灯新話 ─歌と詩と絵画と─」というイベントをYO-EN、黒須信雄の両氏とともに開催するそうだ。場所はギャラリー・ビブリオ(国立市)。3000円、要予約。生野さんのパートは怖い話(詩?)になるらしい。こういうお知らせをもらうと、ちょっとそそられる。そのありさまを空想するだけで心踊るような気分になる。
少し前、映画「インターステラー」(クリストファー・ノーラン)を見るのとほぼ同時に、佐藤史生のマンガ「夢みる惑星」の何度目かの読み返しをしていたのだが、たまたま重なったこの両者になにか共通点があるように感じた。どちらも天変地異の大災害にみまわれ、そこからどう逃れるかという話になっているのだが、そのなかで通信の神秘、交感の奇跡がクローズアップされる。その特殊な力が生き延びるための奥の手となるのだが、こういう危機的状況だからこそ目覚めた心的機能なのかもしれず、そんな状況だから一層その働きが映えるということもあろう。シャーマニックで魔術的な通信は重大局面では啓示となり、なにかのための手段であることを越えて、それ自体が価値となる、ように見える。しかしそれは案外いたるところにその萌芽がひそんでいるのではないか。描かれた絵も、ピアノの音も、鬼百合の姿も、風に翻る裳裾も、こちらになにかを伝えてくるわけで、それが「神秘」に格上げされる瞬間がまれにあり、我々はその時あたかも「カタストロフィから救われた」ような感覚になる……いや、もしかしたら、むしろ逆に、不気味なカタストロフィ幻想に急襲される、のだろうか。いつどこで生ずるかもしれない〈通信の神秘〉は世界を読み解く表徴であり、世界を刷新する亀裂の痛みである、と言われているような気がする。
そもそも通信が成立するということはささやかな神秘であり(かつ、世界が組織される基本となるアクションである)、特別な通信の成立はまさに特別な僥倖である。そしてなにげない通信が一転、特別な通信に変化する驚愕も、つねに期待したいところだ。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 19:44| 日記

2023年07月09日

「虚の筏」31号

「虚の筏」31号が完成しました。
今回の参加者は、海埜今日子、小島きみ子、二条千河、平井達也のみなさんと、小生。
下記リンクからご覧ください:

なお、音符たちは8分の9拍子の名曲からかっさらってきました。

(池田康)

追記
二条千河さんが『詩の檻はない 〜アフガニスタンにおける検閲と芸術の弾圧に対する詩的抗議』というアンソロジーに参加するそうです。
二条さん曰く、
「来る8月15日、北海道詩人協会事務局長・柴田望さん編集による書籍『詩の檻はない 〜アフガニスタンにおける検閲と芸術の弾圧に対する詩的抗議』がデザインエッグ社よりオンデマンド出版されることになりました。
オランダに亡命中のアフガン詩人ソマイア・ラミシュ氏(亡命詩人の家「バームダード」代表)がタリバン暫定政権から出された詩作禁止令に抗議するために今年3月に世界中の詩人から募った100編超の詩作品のうち、36名の日本詩人と21名の海外詩人の作品を収録したアンソロジーです。
私自身も書き下ろしの詩にて参加、また校正者としても奥付に名を連ねております。書籍はすでにAmazonにて予約受付中です。
※フランスでも同趣旨の書籍出版準備が進められておりそちらにも日本詩人一同の作品の仏語訳が掲載される予定です。」
この本と関連イベントのチラシ:
8月24日イベント「世界のどの地域も夜」フライヤー.jpg
posted by 洪水HQ at 09:52| 日記