2014年12月29日

「洪水」15号

kz15.jpg「洪水」15号が完成した。今回の特集は「近現代のやちまた」、この二百年の世界の変遷をどう見るかを、政治経済、科学技術、文化芸術のあらゆる面から考えようという壮大で無謀な試み。もちろん対象が複雑すぎ魑魅魍魎すぎるので決定的解答を示すなど不可能だ。先日紹介した『世界と日本のまちがい』(松岡正剛著)でも、「二十世紀がどういう世紀だったかということは、いくら説明してもしきれないほどです。ジグソーパズルで100枚くらいの絵を別々につくるようなものでしょう」と語られているくらいだ。しかし各記事はそれぞれに興味深い視点、新鮮な思考を提示しており、近現代に対する展望をいくらか刷新していただけるのではないだろうか。
対談は詩人の安藤元雄さんと作曲家の野平一郎さんに、十一月某日、古書市の立つ新橋におでましいただき、19世紀から20世紀にかけてのパリの動き、そこで生まれた文学作品や音楽作品について語り合っていただいた。いくら語っても語り尽くせない文化的に豊穣な時代で、どこで切ってまとめるかは恣意的にならざるをえないが、しかし押えるべきポイントはしっかり押えていただいたと思う。1913年という年(ほぼ百年前!)が画期的だったという話は面白く、昨日たまたま近所の本屋で新刊の棚を眺めていたら『1913』というタイトルの本が出ていて符合に驚いた。ヨーロッパのいろんな文化人たちのこの年の動きを追った本のようだ。
インタビューはなんと豪華二本立てで、評論家の呉智英さんと詩人で思想家の篠原資明さんにお話をうかがった。お二人とも詩については辛口に語られ、刺戟は大きいのではないかと思う。思想や美術についてもオリジナルなご意見を端折ることなくたっぷりとお聞きすることができたと思っている。
もう一つご注意いただきたいのが、秋に日本詩人クラブの主催で開かれた、カリブの詩をテーマにした大会を取り上げた記事群で、小生も短いレポートを書いたほか、森山恵さんや谷口ちかえさんに力のこもったエッセイをご寄稿いただき、まとまった紹介ページになった。どうかお見逃しなく。
それから、巻末の「雲遊泥泳」に今号から柴田千晶さんに加わっていただき、俳句の批評を中心に書いていただくことになった。とても読み応えがあるのでこちらも是非ご覧いただきたい。
巻頭詩は、田野倉康一、金井雄二、船越素子、大西美千代、江夏名枝、平井達也の六氏。中川俊郎さんの連載は今回が最終回となる。
そのほかの記事については下記のURLでご確認いただきたい。
(池田康)

追記
定期購読者送付、一般贈呈送付が運送会社の事情で遅延しておりましたが、もう数日で届けられると思います、お待ちいただければ幸いです。
posted by 洪水HQ at 16:20| Comment(5) | 日記
この記事へのコメント
このたびは拙作をご掲載いただきありがとうございました。
「雲遊泥泳」蝦名さんの文章、いつも楽しみに拝読しているのですが
突然自分の名前が太字で出てきて、心臓が止まるほど驚きました…
Posted by 二条千河 at 2014年12月31日 13:19
他人の手によって書かれた自分の名前は、文脈によっては衝撃的なモノになるのですね。
「Universe」は虚の筏9号掲載時、幾人もの人に好評だったので今回転載させていただきました。
Posted by 池田康 at 2014年12月31日 16:36
tales of tails もよかったし。
Posted by 蝦名泰洋 at 2015年01月01日 11:25
「Tales of Tails」は8号ですね。
下記のURLからご覧下さい。
http://www.kozui.net/soranoikada8.pdf
Posted by 池田康 at 2015年01月01日 12:16
重ね重ね、恐縮です!
Posted by 二条千河 at 2015年01月07日 20:42
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