2015年04月17日

最近の音楽散策

過日、大昔に録音したMDをひっくり返していたら、椎名恵の歌を何曲か入れたものがあった。十年も二十年も前のことだったが、ちょっと好きで聴いていたのだった。今もう一度聴いてみると、この歌唱はやはりこちらの音楽の好みのストライクゾーンのかなり真ん中あたりに入ってくる。真ん中すぎ、優等生すぎる、もう少しばらけた方が……というところもあるかもしれないが。それで先日中古で「今夜はANGEL」のシングルレコードを見つけたので入手。洋楽のカバーアルバム「TOY BOX」も聴いてみた。以前テレサ・テンの洋楽カバーをとてもうまいと思ったが、この人もナチュラルに麗しくこなす。ビージーズ初期の名曲「若葉のころ(First of May)」も入っていて、自ら訳した日本語でうたっており、これはうれしいことだった。
木村カエラは、こんなやせた歌声は趣味じゃないと思うのだが、なぜか最後のところでくくっと曲がってストライクゾーンぎりぎりに入ってくることがある。そのぎりぎりさがまたよいのかもしれない。テレビで何度か「butterfly」というステキな曲を聴いたことはあったが、たまたまラジオで可愛らしい「memories」(みんなのうたの一曲かと想像したのだがそうではないらしい)を耳にして惹かれ、よし聴いてみようと「5 years」というベスト盤的CDを手に取ったのだった。変わった暴れ方をする歌が多いがそれぞれにチャームを感じる(「Jasper」はテクノポップの高度な結実と言えそうだ)。なぜこれらの曲を良いとか面白いとか思うのかよくわからないのだが……。
さて一昨日、上記「memories」の作曲者の、ジャズピアニストの渋谷毅さんの出演するライブを横浜のJazzSpot「ドルフィー」に聴きにいった。出演はほかに清水秀子(ボーカル)、市野元彦(ギター)のお二人。渋谷さんの妹さんである、ギャラリースペースことのはの奥様の宇田川彰さんのご案内によるもの。渋谷さんは、軽やかに音をさばき運動神経に生きるサーファー的奏者というよりはむしろ一音一音の音の重みを考え、構築する、ジャズには少数派のタイプではないか。アルバム「しーそー」(ドラムの森山威男と共演)ではお馴染みの曲を多く演奏しているが、「ダニーボーイ」をはじめとするシンプルな歌たちが、なにか巨大な規模の音の重畳に変じていく様は壮観だ。ライブはジャズナンバーの名唱(スタンダード?知らない曲が多かった。ジャズの旋律は独特の哀愁の曲線があり、スペインの夏をうたった歌では亡き人々のことが思い出された)にくわえ、ピアノとギターだけの掛け合いもオリジナルを含め6曲ほどあり、瞬間々々の音の生死に聴き入るエキサイティングな体験だった。
もう一つ、この日、ライブに行く前に横浜駅前のレコファン(中古音盤店です)でピーター、ポール&マリーのLPを買った。PPMはこのごろよく聴いているのだが、それは「ちっちゃなスズメ」「ハッシャ・バイ」「虹と共に消えた恋」「悲惨な戦争」の4曲がはいった33回転のEPを聴いて、商業音楽からかけはなれたその古雅な調べに感銘を受けたため。このグループは、歌が“商品”になる前の段階に留まっているような素朴なままの歌を飾らずうたうことがあり、そこが貴重なのだろう。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 12:09| Comment(0) | 日記
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