ギャラリーくろさわは駅から歩いて5分ほどのところにある。黒澤酒造の運営するギャラリーで、天井の高い、貫禄ある梁の見えている広々とした部屋には丸い大きな木のテーブルが三つほど置いてあって、これは酒樽の蓋で作ったものだそうだ。非常に味がある。
小島さんの植物を使った工芸作品は松ぼっくり、栃の実、糸杉、薔薇、千日紅など、山で拾ったものや自分の家で育てたものを材料にして半年以上かけて作ったとのこと、乾燥作業から自分の手でやるのは大変だろう。私は五つほど並んでいた、四角い箱に詰めて短い詩の断片をそえた形の作品がなんとなく気に入った(写真)。弁当箱のようだと言ったら小島さんは苦笑していたが、山の幸をぎゅっと詰め合わせた宝箱のような感じがする。無言の命の時間が濃縮されているような。小島さんは信州の博物学者でもあるようで、栃の実は縄文人が食料にしていたのだとか、千曲川はぐねぐね曲がっていろんなところに池を作り、それが「海」と呼ばれてこの辺りの「小海」とか「海ノ口」とか「海尻」とかいった地名になっているのだとか、千日紅は本当に色が千日つまり三年もつのだとか、いろんなことを教えてくれた。最終日の午後遅い時間だったので片付けを手伝ったのも一興。12月にまた別の展覧会を考えているそうだ。
(池田康)