2015年07月24日

コジマさんは博物学者

IMG_4834.JPGIMG_4835.JPG小島きみ子さんの詩と美術の個展が小海線八千穂駅近くのギャラリーくろさわで開催されていた、その最終日(23日)に観に行った。小海線は中央線小淵沢駅から小諸の方へ北に伸びている小規模のワンマンカーの鉄道で、多くの部分は山の中を走る。緑、緑、緑で、木々の枝葉が列車に触れてきて、森の中を疾走しているような、メルヘンの雰囲気がある。霧がかぶっている区間もあり、三十メートル先のレール上に象が座っていても見えなさそうだった。野辺山駅はJRでもっとも高いところにある駅とのことで海抜1200メートルほど。その辺りまでは雨雲が空をおおっていたが野辺山の高原を下りると青空だ。八千穂は古い家が並ぶ落ちついた雰囲気の町で、日時計の止まった時間にトンボ、蜂、蝶が静かに飛んでいる。
ギャラリーくろさわは駅から歩いて5分ほどのところにある。黒澤酒造の運営するギャラリーで、天井の高い、貫禄ある梁の見えている広々とした部屋には丸い大きな木のテーブルが三つほど置いてあって、これは酒樽の蓋で作ったものだそうだ。非常に味がある。
小島さんの植物を使った工芸作品は松ぼっくり、栃の実、糸杉、薔薇、千日紅など、山で拾ったものや自分の家で育てたものを材料にして半年以上かけて作ったとのこと、乾燥作業から自分の手でやるのは大変だろう。私は五つほど並んでいた、四角い箱に詰めて短い詩の断片をそえた形の作品がなんとなく気に入った(写真)。弁当箱のようだと言ったら小島さんは苦笑していたが、山の幸をぎゅっと詰め合わせた宝箱のような感じがする。無言の命の時間が濃縮されているような。小島さんは信州の博物学者でもあるようで、栃の実は縄文人が食料にしていたのだとか、千曲川はぐねぐね曲がっていろんなところに池を作り、それが「海」と呼ばれてこの辺りの「小海」とか「海ノ口」とか「海尻」とかいった地名になっているのだとか、千日紅は本当に色が千日つまり三年もつのだとか、いろんなことを教えてくれた。最終日の午後遅い時間だったので片付けを手伝ったのも一興。12月にまた別の展覧会を考えているそうだ。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 11:31| Comment(0) | 日記
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