2015年08月04日

小田原、そしてブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの新譜

このあいだの土曜日(詩の筏9の次の日)、遠方から上京していた友人とともに暑い日の盛りに汗をかきながら大磯、小田原あたりを回っていた。近くに住んでいても見ていない場所はたくさんあるものだ。疲れたが楽しめた。小田原城のなかの店でかき氷を食べたのだが、子供の食べるものと思いこんでいたのか口にせずに長い間が過ぎていて二十年か三十年ぶりだったかもしれず、夏の涼しい風物詩にすなおに感激。他にこの季節に食べるべきものに桃、西瓜、素麺などがあるが、スモモも旬のようで、先日テニスボール大ほどもあるスモモを見つけ、食べてみたら非常なおいしさで、夏はスモモ、と清少納言になった気分でつぶやいていた。
話を戻して、小田原を一緒にまわった彼とは、最近手に入れたCD『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ 〜ロスト・アンド・ファウンド』を繰り返し聴いた。有名な1996年盤に洩れた歌や曲を集めたもので、同じ頃あるいはその少し後の録音(一部ライブ)で、重複する曲目はないようだ。このキューバのミュージシャンたち(何人かは既に亡くなっているのだが)の全曲初対面の新譜が出たということは喜ばしい。本質的な違いは、1996年のアルバムはギタリストのライ・クーダーが演奏者かつプロデューサーとして入っていたのだが、今回のものにはそういう形での彼の名前はなく、アルバムを統一ある作品に仕上げるという制作意図はさほど感じられない、落ち穂拾い盤、拾遺集の色合いが濃い。しかしどの曲ももちろんキューバのベテランたちならではの魅力が横溢していて聴き入ってしまう。英米のポップスの一般的な作りとは相当にちがう音楽スタイルの曲が完熟の演奏で聴けるのがうれしい。新鮮だったのは、3曲目の「ティエネ・サボール」の女声コーラス、これは前の盤では聴かれなかったものだ(メインボーカルは女性歌手のオマーラ・ポルトゥオンド)。バラ色トーンのBVSCは耳新しい。それから11曲目の「マミ・メ・グスト」でのトランペットやパーカッションなど楽器たちのノイジーなまでの暴れぶりは愉快。この新盤には篠原裕治氏による、この奇なる音楽集団が世に出た経緯をたどる詳しい解説がついていて有難い。1996年盤付属冊子のライ・クーダーによる序文も良い。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 17:12| Comment(0) | 日記
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