2015年08月10日

『CONFESSION 斉木由美作品集』

上記CDが最近ALM RECORDS(コジマ録音)から出た。「嘆きは踊りに変わる」「歓 (JOY)」「モルフォゲネシスII」「弦楽三重奏曲」「キリエ-b」「コンフェッション」の6曲を収める。現代音楽の作曲家の曲はコンサートで一曲だけ聴いても要領を得ないことが多いが、こうして何曲か集めてCDにされたものを静かな平常心で聴くと作家性が少しずつわかってくる面があるから、こうした個展の性格をもったCDは作曲家を世に知らしめるのに非常に意義のある一つの作品発表法と言えそうだ。
2曲目「歓」と6曲目「コンフェッション」はピアノ独奏曲で、どちらもとても刺戟的で大胆に構築されており、迷いがない(確定された表現の動かなさがある)。こんな迫力があって面白い優れたピアノ曲を書けるということは、強靭な論理が駆使されているのであろうと、作曲家に対する信頼が大いに膨らむ。
斉木さんとは岐阜現代美術館での昨年春の演奏会の折、お会いしたことがあるが、「歓」はそのとき初演として演奏されていた。ピアニストは大須賀かおりさん(今回のCDも同じ)。演奏会が終わった後、「歓」おもしろいよねと大須賀さんと話していたことを思い出す。この美術館の所蔵する篠田桃紅氏の作品に着想を得た作品とか。
タイトル曲「コンフェッション」(ピアノ:山田武彦)については、CDの付録冊子に次のような記述がある。
「“CONFESSION”という言葉は、ちょうどその時期に接近したキリスト教における「信仰告白」という意味と、人間的実存における「告白」という二重の意味があり、私はこのタイトルをその両方の意味で用いている」
ここでの「ちょうどその時期」というのは、パリ音楽院で学んだ「技巧的な音の操作」から心が離れ、「独自の音楽を創造する意味について深く考えるようになった」時期のことを指すようだ。パリ音楽院出身と聞くと、ああなるほど、その系列ね、という多少先入見の混じった理解になりがちだが、そこで学習した方法論を突き放して考え直す《転》の機縁をキャリアの上でもった作曲家だと知ると、襟を正して傾聴しなければならないような気になる。
他の4曲もそれぞれ魅力があり、シンプルな編成ながらごまかしレトリックなしの真向勝負、緻密でスリリングで、求心的な強さをもった音楽だ。「キリエ-b」は笙とバスフルートの曲だが、笙(宮田まゆみ)は妖精のオルガンのように美しく鳴り、フルート(多久潤一朗)はワザヲギの尺八のように言葉ゆたかにしゃべる。
(池田康)

追記
このCDは、朝日新聞推薦盤、レコード芸術特選盤および優秀録音盤となっているとのことです。素晴しい!
posted by 洪水HQ at 20:16| Comment(0) | 日記
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