2015年12月01日

八重洋一郎著『太陽帆走』

taiyohanso.jpg詩人の遠征シリーズの第6巻として、八重洋一郎著『太陽帆走』が洪水企画より刊行された。大学で哲学を専攻していた八重さんが、“世界”を探求しその謎を解くべく、ときには深刻な精神的危機にさらされながら、半世紀にわたり古今東西の思想家や哲学者の著した書をひもといて対決し、自己流に噛み砕き、摂取してきた、そのエッセンスを詩的散文の形でうたうように表現する試み。コンスタンチン・ツィオルコフスキー、フリーマン・ダイソン、イリヤ・プリゴジン、松下眞一、臨済、ライプニッツ、マラルメ、メンデレーエフ、玉城康四郎。物理学から形而上学、禅の教えからサンボリスム詩学まで、目眩に見舞われ卒倒しそうなほど多様な世界像が呼び出され強烈に照明される。
後半は「びーぐる」で連載された「石垣島通信」12篇を収める。柳田国男と民俗学の話や難しい現代数学の話、ランボオ、ポオの話など、そして沖縄の怒りも点り、力まないエッセイだが縦横無尽に想念は動き、気がつくと大いに啓発されている。
そしてこれらの哲学的対話の遍歴は最終的には夢のような浮遊感につながるのだろうか。あとがきで著者は言う、「ある些細な前触れのようなものがあって、しばらくして何かはるかな感じ懐かしいような感じが起り、時間の意識がうすれ、ああ、今自分は生きているのだ、自分は時間を超えた何かに結びついていて静かに動けなくなっているのだというようなやわらかい切ない気持になるのである。」
詩人が採集精錬する“思想”という不可思議なものの刺激と醍醐味をぜひ賞味していただきたい。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 12:22| Comment(0) | 日記
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