2016年02月14日

平野晴子詩集『黎明のバケツ』

reimeinobaketsu.jpg平野晴子さんの第四詩集『黎明のバケツ』が洪水企画から刊行された。
心身不安定な夫との山あり谷ありの生活から生まれた28篇の詩を収録する。「書くまいと思っていた」とあとがきにある、そんな抑制の思いの下から衝き上がるようにして現れてきた詩群であるからさすがに必然なるものの力がある。虚実ということで言えば、どれもしっかりした「実」を中心に持っているのだが、表現は白昼夢の囈言のようなあてどなさも少しずつ交えて独自の味わいの「虚」を作り出している、と言えるか。
装画と造本設計は山本萠(もえぎ)さん。
帯にも引用されている、烈しい「男の決意」を紹介したい。

 何が何だか分からんようになった
 生きているのかも分からん
 医者もいいかげんなものだ
 薬など飲まん
 飲めというな
 俺はもういい
 かまってくれるな
 飯も食わん
 食えというな
 診察にも行かん
 行けというな
 検査などして何が分かる
 無駄なことするだけだ
 俺が何をしたというのだ
 言われたことをしたまでだ
 俺は可哀想すぎる
 おまえも可哀想だ
 俺も死ぬからおまえも死ね
 一度死んだらもう死なんでもいい
 死んだら楽になる
 国にも迷惑かけんで済む

 雨上がりの
 雨の匂いがする窓辺
 泣き止んだお天道様が
 はにかんでいる空の下

 男の決意に
 あつくあつく
 誘われて
 ちょいとついて行きたくなる

(池田康)
posted by 洪水HQ at 00:00| Comment(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: