2016年05月18日

南川優子詩集『スカート』

minamikawa-skirt.jpg「洪水」雲遊泥泳欄で毎回書いて下さっている、イギリス在住の南川優子さんの新しい詩集『スカート』が洪水企画から出た。装丁は南川さんと同じくguiの同人の四釜裕子さん。この詩集制作の話は2年ほど前からあったのだが、ゆっくりことを進める南川さんのリズムで、今年ようやく完成を迎えることになった。特徴をどう説明しようか。帯に「奇想の遊戯と実生活の抒情、身体の原理と現代社会への洞察とが秘伝のレシピで混ざりあい……」という文句があるが、たしかにそれくらいの視野の広さ、意識の鋭さがある。編集していると何回も本文を読み返すことになり、そうすると作者の内的ロジックの微妙なところもなんとなくわかってきて、読みにくかった作品も、ははん、そうか、と合点がいったりする。そうなるとどの作品も面白い。飛躍や謎めいたところも多い南川作品だが、だから時間をかけて繰り返し読んで頂きたい。原稿を受け取った当初から好きで今も大好きなのが「かかし」だ。女性の視点からの詩も多いがこの作品はそうではなく普遍的な哀切さがダイレクトに伝わってくる。長いから前半三分の一だけ引用する。全体は本を手に取って御覧下さい。

 彼の支柱は マイクスタンド
 ロックシンガーが
 ステージの上でにぎりしめ
 ふりまわし もたれかかり
 ときには けりあげて
 唾のシャワーをあびせた
 銀色の棒は
 いつしか 廃棄物にまぎれ

 農場主が ごみ収集場から 拾い

 今
 セックスもドラッグも 
 ロックンロールも見あたらない
 麦畑に
 背骨として 立っている
 かつて マイクがささっていた
 先端に
 布が 包帯のように巻かれ
 木の枝が ひもで
 十字にくくりつけられ
 着古しのTシャツを かぶせられて
 (後略)

(池田康)
posted by 洪水HQ at 14:51| Comment(0) | 日記
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