2016年06月12日

大西久美子歌集批評会など

昨日は午後、中野サンプラザ研修室で行われた大西久美子歌集『イーハトーブの数式』(書肆侃侃房)の批評会に参加した。加藤治郎さんのご案内で。パネリストは、大松達知、鯨井可菜子、服部真里子、藤原龍一郎、加藤治郎(司会)、の皆さん。周到で熱の入った議論に、歌人たちは丁寧に細やかに作品に接すると感心する。議論の過程で注目されていた歌を挙げると、

 夕方をひきずるやうに通過する夏の平野に駅が落ちてゐる
 やはらかい雨の近づく昼下りクリームパンを柩に入れる
 鰐園の鰐の眼、父にふと見えてゐるのかわたし生きてゐるのか
 ひつそりと書棚の奥のしらまゆみHAL9000はだれを待ちゐる

など。私が読んで印をつけた歌を三首ほど挙げれば、

 ダンプ車の運ぶ瓦礫に金属の混じりてけふの夕陽を弾く
 白樺の根もとに昏く眠る蝉 わたしは夢のなかにゐるのか
 薄闇にアドレスひとつ削除するつららの落ちる音を聞きつつ

一首目は、theアララギというか、写生の凄みを感じた。この歌集の大きなテーマと直接結びつくというわけではないが。二首目、父親の死に際しての悲しみはいろいろな角度から詠まれて本歌集の一つの核となっているが、この一首がもっとも永続的な鈍い痛みを感じさせる。三首目、つららの音が唐突に思えるが岩手出身の作者の耳の奥にいつも隠れているのだろう。
そのあと、トロッタの会23コンサート(早稲田奉仕園)へ。前半しか聴けなかったが、サティの曲や、「Hydrogen燦舞曲」(酒井健吉)、「空の死」(高橋通)が面白味もあり、ちょっとよかった。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 11:27| Comment(2) | 日記
この記事へのコメント
こんにちは。大変お世話になっております。
未来短歌会の大西久美子です。

6月11日(土)の拙著の批評会には、
お忙しい中、ご参加いただきまして、
ほんとうにありがとうございました。

詳しく丁寧にblogでお取りあげくださいまして、
感謝の気持ちでいっぱいです。

お引きいただいた3首と評、
嬉しく拝読させていただきました。

写生の凄み、ぞくっとするほど、うれしいです。

大きな励ましをいただき、深く感謝しております。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

2016年7月4日 大西久美子拝


Posted by 大西久美子 at 2016年07月04日 04:20
コメントありがとうございます。
ますますのご活躍を祈っております。
私は途中退出しましたが
参加者たくさんのいい批評会でしたね、
歌人たちの情熱を強く感じました。
Posted by 池田康 at 2016年07月06日 23:29
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