昨日、「緋国民楽派」の第14回作品演奏会を錦糸町のすみだトリフォニー小ホールで聴いた。「緋国民楽派」は寺嶋陸也、萩京子、吉川和夫の作曲家三氏のグループ。「洪水」18号にインタビューで登場してくださった萩さんにご案内をもらって。演奏は、水野佐知香(vn)、寺嶋陸也(pf)。コンサート前半は「緋国民」にしては上品でシリアスな曲が並んだが、後半は歌の弾力が感じられる曲を柱にしたプログラムになっていた。
もっとも強くはっきりと音楽の愉楽を享受したのは寺嶋作「グリーンスリーヴスによる変奏曲」で、おなじみのこの民謡をもとにした変奏曲を無伴奏のヴァイオリンで弾く。バッハを思わせるような構築の変奏もあり、バロック風、古典派風、ロマン派風などと変化をつけていったと作者が語るとおり音楽スタイルのメタモルフォーゼが面白い。学生時代に作った曲の発展形の一つだそうで、寺嶋氏の創作にかけるしぶとさが偲ばれる。
吉川氏は清冽な「幻想風小品〈NAIWAN〉」「Air」の二曲で音楽に対する誠実な取り組みの姿勢がなんとなくわかった。(「ソナタ風幻想曲〈SANRIKU〉」は長すぎてこのとき少し往路の疲れからくる眠気と格闘していた私には全体がつかみにくかった)
萩さんの曲「A FOREST」は純然たる器楽曲で、オペラの仕事とはちがった面でのきびしさを見ることができた。「もうひとつの…」は歌をもとにした5曲の組曲で、歌のリズムと旋律が楽しい。
「緋国民」とはなにか。こんな国のメインストリームに従順な国民にはなりたくないという思いもあるのかもしれないが、「緋の国」の民という意味かもしれず、とすると「緋国」とは幻の歌の国のようなものだろうか。
ヴァイオリンの技を存分に堪能した一夜だった。
(池田康)
2016年07月24日
緋国民楽派14回コンサート
posted by 洪水HQ at 19:08| Comment(0)
| 日記
この記事へのコメント
コメントを書く