2016年10月31日

福島泰樹第29歌集『哀悼』

昨夕は福島泰樹さんの第29歌集『哀悼』(皓星社)出版記念の短歌絶叫コンサートを吉祥寺の曼荼羅で聴いた。通常のレパートリーに加えこの歌集の内容を題材にした曲も演奏された。歌集から何首か引用する。

 (諏訪優に)
 諏訪さんが描いてくれたプロペラ機わが上空を飛びて幾夜さ
 透き通りひかりのように屈折しコップの中を過ぎた嵐か
 蓮の葉に胡瓜をきざみ酒を注ぎ灯をともしけり帰りこよ君
 (長澤延子に)
 みつめすぎてしまった罰か鏡割れこの自意識のつらい葛藤
 青酸のカリ活用 と笑いしは戯れならず死んでゆくため
 淋しくてならねば襤褸切かきあつめランルの旗はひとり顫える
 肉体の奴隷とならぬそのために自らを裂くペーパーナイフ
 わたくしの胎児は去りて薔薇色の雨に打たれているのであろう
 わたくしの内なる胎児かなしめば森に遠いピストルの音
 (黒田和美に)
 気に入らぬ雨に傘などさすものかびしょ濡れをゆくむね張ってゆく
 一糸纏わぬ冬の裸木の了見を忘れず生きてゆくよしばらく
 遠い夜のあなたの家の団欒の グランドピアノ黒鍵ばかり
 ガツン詩歌を叩き続けよ冥界で会うとき俺に寄り添ってくれ

ピアノは永畑雅人、ドラムは石塚俊明。石塚氏のドラムは21日の石橋幸コンサートで聴いたばかりだったが、この日は至近距離だったので音がすさまじかった。「つんざく」という言葉そのもので、刃のような鋭い音が乱舞する、それでいて音楽的思考も感じられる特上のドラムであった。福島さんの声も冴えていた。こういう重い真摯な抒情をかくも直截にステージにのせようとする演劇人やウタビトは他にいないだろう。
この日は昼に町田のまほろ座で民謡歌手・伊藤多喜雄のライブを、洪水次号の特集「日本の音楽の古里」の参考のために聴いており、ライブハウス特有の陶酔感にしびれた一日だった。曼荼羅の方は客が大入りに入りすぎたため空気の悪さがちょっと辛かったが。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 12:01| Comment(0) | 日記
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