2016年11月26日

やわらかい歌声

一週間ほどノラ・ジョーンズの新譜『DAY BREAKS』をCDプレーヤーに入れっぱなしで繰り返し聴いていた。最初の曲のイントロから引き入れられ、どの曲も耳をつかまえる。最後の「アフリカの花」(D.エリントン作)も非常にミステリアスなかんじの個性的な曲。ボーナストラックの「Don't Know Why」(ライヴ版)はデビューアルバムに入っていた彼女の代表曲だが、ここでの歌唱はオリジナル以上にはりつめた緊張感、力感があり、微細な表情にみちている。成熟。
そんなノラ・ジョーンズのCDを押し出して、昨日プレーヤーに収まったのが、香西かおりの出たばかりのライヴアルバム『The Live うたびと』だ。「ミュージックマガジン」12月号(ボブ・ディラン特集)をひらくとこの歌手の記事があり、この新作が紹介されていたのだが、民謡の南部俵積み歌をうたっていると書いてあったので、「洪水」次号の特集「日本の音楽の古里」で民謡を集中的に聴いていたこともあり、興味をそそられて手にとったという次第。俵積み歌はこのあいだの伊藤多喜雄ライヴでも堪能したが、この香西かおりヴァージョンも教条的な上手を目指さない自由な歌いぶりがいい。収録されている他の曲も楽しく聴ける。“お仕事”でうたうというのではなく、うたいたいからうたうという姿勢がこの柔らかさを生み出すのだろうか、ジャズ的なバンド編成にもうながされて、型通りの制約から解放された歌声のしどけなさが生彩を放っている。好き勝手な遊びのよさ。精一杯声を張り上げて高らかに歌い上げるというのではなく、マイルドな歌声が自らの響きに酔うような、気持ちよく自然な流れで踊るような、ゆとりの中のニュアンスの豊富さが身上となっていると言えるかもしれない。バックの演奏も積極性と活気があって、ジャジーな音の躍動が楽しめる。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 13:58| Comment(0) | 日記
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