
どの曲にも深い思いがこもっているが、私がもっとも印象的に思ったのは「雨乞い」で、「わたしたちはいつも心のどこかで雨乞いの歌をうたっている」という副題がついている。雨が降らないと生きていけない、雨は天の恵み、という思いをうたっており、裸の生命の希求が感じられる。八重さんの解説より:「台風も来ない、雨一粒落ちない、雨雲さえ来ないひでりが続く時、人間・動植物達はひたすら神に祈るしかなかった。/神とは? 人々がある場所に棲処を定めようとする時、まずその心の拠りどころとなる場所を探し霊感をもってそれを発見し、その場所を聖域とし、自分たちを超える存在が常に顕現する聖所とする。そしてその聖域において、人間たちは極小の存在となって極大のもの無限大のものに願い祈る。その願いの赴くところ、祈りの対象、それが八重山の神であった。/ある場所を自分たちの棲む場所と決めたら、平和な安寧の生活が続くよう、はじめに“祈りの場所”を求めた。それが“御嶽(オン)”と呼ばれた。自分たちを守る場所というより、守って下さいと祈る場所。神さまをここに呼び込み、何かにつけて“守って下さい”とすがる場所。/田を稔らせて下さい、健康に過ごさせて下さい、良い子に恵まれますように、病いが早く治りますように、……自分が〈無〉になれる祈りの場所・願いの場所が八重山の御嶽である。/そして、最大の願いのひとつが、常にいい雨に恵まれますように、ということであった。例えば豊年祭に登場する旗頭の旗には「五風十雨」と染め抜く。豊作のためには、適度な天からの恵みの雨が不可欠であるからである。民謡の中でも、しばしば「十日越しの夜雨(トウカグシヌユアミ)」が願われた。/雨を願う心とは、生命への恵みを願うことと同じである。/雨を給わってください、雨を給わって下さい…/アミユタボーリ アミユタボーリ アミユタボーリ アミユタボーリ…」
「アミユタボーリ」という祈りの文句が心に残る。
タイトル作の「あの星」は、宇宙の遠方から眺められた地球のこと。この星での無数の生命の営みを寿ぐ曲。八重さんの解説より:「地球とは全宇宙が祈りに祈って生み出した「希望」なのではあるまいか。“なつかしきまろきいのち”が涯のない漆黒の闇の中、青く奇しくほのぼのと希望を点して輝いている。」
A4判128ページ、定価2000円+税。
(池田康)