2017年01月28日

平井達也詩集『積雪前夜』ほか

北海道の二条千河さんが上京するというので、急遽「詩素」1号の執筆者で集れる人が集り、昨日ちょっとした研究会と食事会をしていた。二条さんが彼女の文学生活の出発点となった「三国志」の魅力とそれに基づく創作を語ったり、「詩素」創刊号についての意見を交わしたり、現代詩の根本的難点を議論したり。
平井達也さんも参加していたのだが、彼は最近詩集『積雪前夜』(潮流出版社)を出したので、その感想なども。平井さんは「虚の筏」「詩素」に作品発表していて、その都度なんとなく読んでいたが、一冊の作品集にまとまってみると「この人はこういう作者だ」というくっきりとした印象を受け取ることができる。苦いユーモアがあり、イメージの繋げ方が巧みで、生活の中の小さなずれや軋みを梃にして奇妙な呻きのこもった絵をつくってゆく。
「それにしても牛丼お新香セットが/美味しいことが悲しいのだ」(「昼休みの牛丼」)こんなささやかな哀歓も実感としてわかるのがまたもの悲しい。
「商談」の後半:

 営業マンというのも大変だ
 都内で雪男が発見されるくらいに大変だ
 山手線の外回りと内回りが結婚して
 小さな山手線を産むくらい大変だ

 誰も商談とは無縁でいられなくなって
 ファミリーレストランでは
 電卓と正直さは叩かれっぱなしだ
 ほんとうに私たちが交わすべき契約は
 どこかの錆びた金庫にしまいこまれたまま

お金を払ったり受け取ったりの、我々の生活を形成している商売というものの骨折りと胡乱さが今更ながらしみじみと感じられてくる。
「債務」という詩もある。その第4連:
「日々に債務が貼りついている。恋人も仲間もいつか去っていくのは誰かに返さなければならないものだからだきっと。それでも返済が終わることはない。永遠に万人から回収し続ける巨大な債権者がいる」
この債権者からは逃げることができないらしい……
(池田康)
posted by 洪水HQ at 17:36| Comment(0) | 日記
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