2017年03月10日

気のダイナミズムの音楽

昨夜、紀尾井ホールでオーケストラアジアジャパンの演奏会(指揮=稲田康)を聴いた。新実徳英さんの新曲が初演されるということで。オーケストラアジアジャパンとは日中韓の音楽家で作られたオーケストラアジアの日本人メンバーのグループ。前半は、七人の筝による「風と光と空と」(佐藤敏直作)、三本の尺八のための「ソネット」(三木稔作)、三味線と邦楽器オケによる「三味線協奏曲」(長澤勝俊作、三味線=杵屋彌四郎)。筝の奏者の方たちはみなピンク系の着物を着ていて華やか。ステージに立つ音楽家は黒っぽい服を着ることが多くそれも理解できるが、こういう彩りも悪くない。筝はピアノとかピアニシモで弾くときれいに響きがふくらむこともわかった。三味線、鋭い激しさで存在感を示す。
後半、ソロ曲「溌水節」(伍芳作)と協奏曲「丹青仙子」(劉文金作)は中国古筝(=伍芳)の曲。スティールとナイロンでできた弦だそうで、明るく強い響きでくっきりした演奏効果がある。オケはへんてこな濁りの響きも出してくるが、基本的にはくぐもらない明朗さ。新実さんの新曲、二十五絃筝協奏曲「魂のかたち」は、なによりも気合いのみなぎりが強力だった(二十五絃筝=滝田美智子)。それまでの曲目は音楽のロジックを冷静に組み立てていく姿勢が見られ、聴く側もそれを一つ一つ辿っていく感じで聴けたが、コンサート最後の曲でしかも新曲初演となると弾く方も特別の気迫がこもるのだろう、音の気が異形を呈するようになる。聴衆も、聴くよりも感じる。新実さんは演奏前にステージ上で話をし、いま取り組んでいるピアノのエチュードと同じような狙いで作ったと語ったが、ピアノのエチュードが精密な論理を追求しているように聴こえたのに対し、今回の曲は論理よりも気合い、気が作る山々の形、気の流れのダイナミズムが設計されているように感じられた。幽霊も出現する時は(それがあるとすれば)現実世界の秩序論理を突破しうる破格の気合いでもって出てくるのであろう。魂のかたちとは気の働きの絵図なのだ。オーケストラの部分もかなりばらばらに動く難しい書き方をしたとのことで、弾く側も自分がはたして正しく弾けているのか、初演でもあるし、心許ないかんじもあったと推測され、その分余計に曲の生成に向けて一入の気を注ぎ込んだのだろう。日本人作曲家の現代音楽曲はこのように特別の気合いによってインパクトを得て良い曲になる場合が案外あるのではないかとも思われた。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 14:43| Comment(0) | 日記
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