2017年11月19日

「リュミエール!」

「リュミエール!」はフランスのルイ&オーギュスト・リュミエール兄弟が19世紀から20世紀への端境期に自ら発明した〈シネマトグラフ〉で撮った1422本もの掌編映像作品から108本を選んで編集し90分にまとめたもの。当時は1本50秒しか撮れなかったので、短歌のような一口サイズの作品で、その限界が生み出す独特の味がある。消防馬車、蒸気機関車、子供曲芸団、水泳や登山、鉄球遊び、油田火災、カメラを動かしてのパノラマ撮影、大きな船の進水式、洗濯女、自転車、子供の表情、コメディ寸劇など題材は多岐にわたり、当時のフランスの生活風景がよくわかる。エジプト、メキシコ、ベトナム、中国や日本など世界各地に赴いての撮影も好奇心が動いていて面白い。ナレーションが構図の良さを力説していたがなるほどたしかにと納得する、絵心とエンタテイナー気質を具えた撮影者たちだ。ファインダーもなかったとのことで、それでこんなに上手に撮れるのかと驚く。サン=サーンスの音楽も柔らかくしなやかで、合理主義を眠りに誘うような曲線の蠱惑があり心地よい。映画の元祖の称号をめぐるエジソンとの確執もあったようだが(それをテーマにして笑いのめした一編もあった)、映画史の原点を確かめる驚異(百二十年前に初めて映画を目にした人々のそれに通じる)と意義深さはしかと感じられた。監督と編集はティエリー・フレモー(カンヌ国際映画祭のエラい人らしい)。
この映画は先日横浜のシネマ・ジャック&ベティで見たのだが、そこでそう言えばと思い出し、この映画館発行の映画雑誌『ジャックと豆の木』2号を購入した。前に作曲家の佐藤聰明さんがこの雑誌のインタビューを受けたと話しておられたその記事がこの号に載っていたので。映画作品のきらびやかな面よりも、映画館事情など、産業を成立させている日陰の部分にも目を向けているのが特色か、「映画と映画館の本」という副題もついている。現在4号まで出ているらしいが、この2号には佐藤さんのインタビューの他に、ATG映画特集(佐藤忠男×篠田正浩の対談ほか。さほど遠くない過去に制作費一千万円で歴史に残る名作映画を作っていた時代があったのだ!?)とか、杉野希妃インタビューとか、ドキュメンタリー映画についての座談会とか、横浜のミニシアターの紹介などなどの記事が載っている。カラーページもふんだんにある立派な作りで、多数掲載されている映画のポスター、ちらし、パンフレットの魅力が目を引く。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 11:29| Comment(0) | 日記
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