2017年12月09日

天翔る楽器たち

昨夜、東京文化会館小ホールで「四人組とその仲間たち室内楽コンサート 調和の原点U ─単色と双色の狭間で─」を聴いた。全曲世界初演。プログラム順に記録を留めると、
1.池辺晋一郎「バイヴァランス XIII 2本のフルートのために」(fl)小泉浩&織田なおみ。オーケストラの中に入ったり室内楽で他の楽器と一緒のときのフルートはどこか窮屈そうだが、今作では足枷から逃れてのびのびと奔放に天翔っていた。妖しさも豊富。
2.金子仁美「歌をうたい…(II)リコーダーのための」(rec)鈴木俊哉。この作曲家は求道者でいつもとてもきびしい。ハードボイルド、ハードロックの「ハード」。鋭い音の棘をたくさん身につけた小動物のイメージ。しかし解説には聖書の詩篇をベースにしたと書かれており、恐縮。
3.酒井健治「エーテル幻想 ギターソロのための」(gtr)鈴木大介。狙いを今ひとつ掴みきれないところがあったが(演奏のオーラの喚起を求めて、と解説にはある)ギターの響きには酔った。とくに低音弦を鳴らすときや全弦をかきならすときなど、魅力的。ここまでが前半。
4.西村朗「無伴奏ヴィオラ・ソナタ第3番〈キメラ〉」(va)伊藤美香。苦虫を噛みつぶした表情から朗々と高唱するところまで、この楽器の可能性の最大限が示される。とくに重音を奏するときの迫力は空間がねじ曲げられるよう。ヴァイオリンのヒステリックな感じはないが、無意識の鬱の気配を秘めた楽器。
5.新実徳英「ピアノのためのエチュード ─神々への問い─ 第3巻 A.E.69」(pf)若林顕。このピアニストの打鍵の強さが、これがピアノだろうかと驚くような輝かしさを生み出す。“スーパーピアノ”がステージ上に出現した。新実さんの近年の作品は古典的論理性を感じさせるものも多い記憶があったが、この作品はパッショネートな音のうねりや爆発の面がより強く出ているように思われた。若林氏の演奏の絢爛さ豊麗さに客席は問答無用に圧倒された観があった。個人的には「エチュード」という曲名でイメージされるストイックさとちょっとずれるような気もしたのだが...新実さんによれば、音楽の歴史においてピアノ曲のエチュードという種目は決してストイックなものではないとのこと。創造の新しい形を目指す“挑戦”の意味でのエチュードなのだろう。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 11:19| Comment(0) | 日記
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