
「みらいらん」は「未来卵」であり、「未来への乱」でもあり、あるいは「嵐」も「濫」もあり、「RUN」も考えられる。表紙のアルファベット表記の真中の「LYRE」は竪琴(リラ。英語読みはライラ)で、未来卵の中に竪琴が隠れているというイメージ。とすると、「みん(睡眠の眠)=ねむり」をライラの歌が破る、という解もありうるだろうか。
詩と批評を中心に、他ジャンルも広く視野に入れ、新鮮で刺戟にみちた創造精神の座標を拓くことを目指す。
創刊号の大きな企画は、詩人の野村喜和夫さんと作曲家の篠田昌伸さんにゲストとして詩人の四元康祐さんが加わった座談会「詩と音楽のあいだをめぐって」。あえて尖鋭な現代詩を多く取り上げて作曲する篠田さんに話を聞き、詩と音楽の現在について考える試みで、篠田さんが野村さんの詩に作曲した三作品(「街の衣のいちまい下の虹は蛇だ」「平安ステークス」「この世の果ての代数学」)が主な話題となった。最新の「この世の果ての代数学」は昨年のクリスマスイブの夜に女声合唱団暁によって初演された誕生したばかりのもの(このブログ2017.12.25の項を参照)。なおこの座談会は、昨年11月4日に詩とダンスのミュージアムで行われた。
インタビュー〈手に宿る思想〉は創造の方法論の中にひそむ実践に直結した思想を探る企画だが、初回は洪水企画の出版物をたくさん手がけているブックデザイナーの巌谷純介さんに、本作りの様々な秘話をうかがった。
ほかに小特集「裸の詩」(高階杞一、有働薫、渡辺玄英、高岡修、北爪満喜、水谷有美の各氏の参加)、東日本大震災を現在に呼び起こす伊武トーマさんの連載詩「反時代的ラブソング」、林浩平さんのあまり世に知られていない名作を掘り起こす「Hidden Treasure 現代詩 埋もれた名篇を探る」(初回は会田綱雄「大工ヨセフ」を取り上げる)、巻頭詩は嶋岡晨、麻生直子、紫圭子、廿楽順治、生野毅、三尾みつ子の皆さん。そして連載詩=小島きみ子さん、連載掌編=海埜今日子さん。そのほか、詳しくは次のリンク頁をご覧いただきたい。
コロンブスの卵から近代が生まれたとしたら、「みらいらん」の幻想の卵からは次の文明時代の胚芽が誕生するのであってほしいと祈念しつつ、千年の詩魂の卵を育み、現実を支配する論理に思想の乱を挑む、という最高次の難題に出発したい。
(池田康)