2018年03月22日

家族の秘密

テレビドラマ「anone」(日本テレビ)が最終回を迎えた。脚本家・坂元裕二の小研究を遂行中だったので毎回欠かさず観ていた。わかりやすく楽しませる要素はやや控えめで、果敢に攻め、奇妙な展開に満ちた、純文学色の濃い作品だったと言えそうだ。この作者特有の、生存のどん底をつかまえる感触が今作でも変わらずにあり、奇跡に準ずるような大小の人間模様の形をいろいろ見せてもらったように思うが、大雑把に一言でまとめるなら、偽造家族が本物の家族として通用するところまで行く、という流れになるだろうか。内側をなにもかも公然とできるようなきれいに整頓された家族は本物の家族ではない。家族はその家族独自の“秘密”(真似できない透かし模様…)があるのであり、それが家族の真正さを作る。その“秘密”は世間の常識から言うとどこかおかしかったり、歪んでいたり、外部の人間や社会には到底理解されなかったり、場合によっては悪事に属するものだったりするのだろう。傷や恥部をかかえたり悪事を働くことは不幸だが、その不幸を全員で共有し責を負うことで家族は本物に生まれ変わる。
前作「カルテット」にかすかに不条理劇の匂いを感じて、その点の動向を追尾するに、今作でもその「ちょっぴり不条理劇モード」は継続しているように思われた。「カルテット」では本物の家族を形成するところまでは行かなかったように見受けられたが、「anone」では敢然とそこまで描かれた、ということになるだろうか。一昨年以前に作られた傑作群(「Mother」「Woman」等)と比べ、この「ちょっぴり不条理劇モード」の近作を嘉すべきか、心配すべきかは、わからない、しかし創作者はつねに新しい冒険に挑みたいものなのだし、文学や演劇の分野に引きつけて言えば、驚かされ、とても刺戟的だ。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 18:17| Comment(0) | 日記
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