「部屋/形態」など三作が上映される。どれも5分〜10分ほどの短いものだが、制作法は描画の生成の過程を一コマ一コマ撮影するという気の遠くなるやり方で、何ヵ月もかけての忍耐強い作業の結晶がこれかと思うと、眼が強く緊張する。沖縄で出会った吉増剛造氏とのやりとりで映像に開眼したとか、イギリスに渡りその地特有の「赤・青・黄」を発見し風土につながることによって制作作業を始めることができたとか、音楽を描きたいという根本の願望とか、ご本人によって語られるヒントも作品と対面する良い手掛かりとなった。具体的な物象をつかっての抽象的構成が、恐怖、不安、恍惚、欲情、歓喜、眩惑、等々さまざまな感情を喚起する、動く絵の摩訶不思議の楽しさと魔境。
野村さんによる“座標軸”の形がここにあるという慧眼の指摘など、ご両人の間で石田作品をめぐって縦横に議論が交わされた、その様子については「みらいらん」次号(7月刊行予定)にこの対談を収録する予定なので、是非ご覧いただきたい。
(池田康)