2018年09月20日

死してなお…

安室奈美恵が引退するとか稀勢の里が引退をまぬがれたとかいろいろ騒がしいが、この人も一種の引退だろうか。樹木希林死す。最後の最後まで映画の仕事をしていたようだ。彼女が出演した近年の作品に「歩いても 歩いても」(2008、是枝裕和監督)があるが、それと主人公とその姉(阿部寛・YOU)が同じのテレビドラマ「ゴーイング・マイ・ホーム」(2012)を最近DVDを借りて観ていた。同監督が脚本・演出を担当し、ホームドラマで父親が死に向かうという点も同じ。しかし全体の雰囲気がキャストに左右される点もあるのか、色合いはずいぶん違っており、前者が癒しがたい闇を抱えているのに対し、後者が穏やかにピースフルにまとまっているのは、母役の吉行和子のカラッとした朗らかさや妻役の山口智子の自然体の陽旋律に引っ張られているようにも思われた。「歩いても 歩いても」の樹木希林(母役)はたえず闇を分泌し、人間のダークサイドを露呈させることに巧みで、罪業を許容する懐をもち、いたって冷静な道のりで狂気に辿りつく。まことに希なる「恐いおばあさん」。女優という人たちの大多数はいつまでも美しさを磨くことに精進するのだろうが、彼女はその逆の方向に歩いていたようにも見えるのだ。まだ未公開の映画もあるようだから、死してなお引退せず、と言わなければいけないのかもしれない。
(池田康)

追記
テレビで追悼放映された映画「わが母の記」(2012、主演=役所広司・樹木希林)を観た。原田眞人監督作品にこんな逸品があったのですね。作家の主人公が子供時代に作った詩についてのエピソードもすばらしい。
posted by 洪水HQ at 22:38| Comment(0) | 日記
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