2018年10月18日

嶋岡晨詩集『アメンボーの唄』

amenbo2.jpg嶋岡晨さんの新しい詩集『アメンボーの唄』が完成した。洪水企画刊、A5判88頁、1800円+税。この一年以内に書かれた32篇を収録、筆力の旺盛さ、頭脳の矍鑠さは驚くばかり。「みらいらん」に連載している「びっくり動物誌」のように動物を素材にした作品が多く、虚実を往還して変幻自在で、世界のあらゆる場所・あらゆる角度からの抒情が交錯する。帯の紹介文では「けなげな有象無象たちが哀切に私語=詩語する幻妖な世界寓話のパノラマ」と紹介している。風変わりにシンプルな装丁は嶋岡さん自身が設計した文字組みをそのまま活かして作ったもの。タイトル作は水面で生活するアメンボーに仮託しての独言の詩だが、ここでは動物詩ではなくかなりストレートな「ある領域」という作品を引用紹介したい。

 その世界では
 死んだ者は一人もいない
 祖父は磯釣りに行ったまま
 祖母は竃の前にしゃがんだまま
 母は息子のため毛糸を編みつづけ
 父は巡邏に出かけたまま
 従妹は片手もげた人形をおぶったまま

 帰らない叔母を待ちつづけ

 七十五年経つが
 死んだ者からの近況報告がない
 小型の旧いロボットのように
 倒れたとたんみなすぐ起き上がる
                らしい

 おれ自身 倒れるとすばやく立ち
 魂を そっと 他人のものと
              入れ替える。

(池田康)
posted by 洪水HQ at 14:38| Comment(0) | 日記
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