加藤典洋さんが亡くなったという報道があり、本当なのだろうかと信じられなかった。5年前、「洪水」14号でインタビューをさせていただき、国内外のロックやポップスのことなど音楽についていろいろお話をうかがった。独自のロジックを自在に発動させる至極元気なそのお姿はついこの間のことのように思い出される。そのインタビュー「『耳をふさいで、歌を聴く』を聴く」から、忌野清志郎について語った一節をここに再録しよう。
「忌野清志郎はなぜかわからないけど、好きでなかったんです。みんないいと言うでしょう。なんでいいんだろうと思っていた。(中略)でも、それまで聴いていなかった初期のアルバムを好きになって、第二アルバムの『楽しい夕に』にびっくりした。すごくいいんです。天才だと思った。彼の文章も面白いんです。文庫本になっているんですけど、あれを読んでいると、ビートルズなんてなんだと書いている。その気持ちはよくわかる。あの当時の忌野の才能からすれば、そう言えるような高みにいて力を発揮していた。」
さらに話の先の方で質的劣化と量的拡散の皮肉で歪な関係にも及んで、批評家として面目躍如の眼光の鋭さに触れることができる。
あの日の貴重な2時間の恩を感謝するとともにご冥福を祈りたい。
(池田康)
2019年05月21日
加藤典洋さん
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