昨日は豊洲シビックセンターホールでの高橋アキさんのピアノリサイタルを聴きに出かけた。曲目は、シューベルト「ヒュッテンブレンナーの主題による13の変奏曲」「4つの即興曲」、一柳慧「ピアノ・メディア」、間宮芳生「家が生きていたころ」、鈴木治行「句読点VIII」、クセナキス「ヘルマ」。
シューベルトは、なぜこんなに傾倒して集中的に取り組むのだろうと不思議に思わないでもなかったが、ショパンに代表されるピアニズムの精緻とはちがった、ある音型やフレーズの素朴な繰り返しを多用して曲を築いていくところが、高橋アキさんが専門にしている現代音楽曲に通じるところがあるのかもしれない。「4つの即興曲」にこもる内向的な熱には圧倒された。一柳慧「ピアノ・メディア」は有名な曲だが、今回、前から2列目の席という間近で、至妙の手の動きを見ながら聴くことができ、特別の興奮があり、大幸運だった。間宮作品は朗読付き(イヌイットのファンタジックな物語)、ピアノの響きのユニークに美しい瞬間が不意を打つようにちりばめられる。鈴木作品はタイマーを使った、主知的な曲と聴いた。「コンセプトは、音楽の自然な流れの切断、脱臼」と作曲者は解説する。クセナキス「ヘルマ」はとんでもない音の爆発で、ピアノ演奏の一つの極限に挑むものか、指が飛んでいた。アンコールでは湯浅譲二作品(小品二つ)とともに、武満徹編曲の「ゴールデンスランバー」が、最近亡くなられた武満夫人を悼んで演奏された。
(池田康)
2019年10月25日
高橋アキ/ピアノリサイタル2019
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