
今号の一番大きな特別企画「いま、なぜビート詩か?」は、中上哲夫さんからビート詩研究会というのをやっているからその座談会をとご提案いただいたのだが、昨今の社会情勢では座談会は無理だろうということで、回覧書簡という形になった。五人の研究会メンバー、中上哲夫・油本達夫・飛松裕太・長田典子・野木京子の各氏がこの順番で手紙をつづる。前編と後編にわかれていて、今号は前編で、それぞれがどのようにしてビート詩に近づいてこの研究会に参加するに至ったかが語られている。後編は次号掲載予定。
そして連詩についての記事を二つ並べて掲載した。一つは、野村喜和夫さんによる「「しずおか連詩」の過去・現在・未来」で、故・大岡信を引き継いでこの連詩の会の捌き手(世話人?)をしているご本人による紹介は核心を捉えていて重みがある。大岡信が現在の連詩の形をどういう論理で構築したかもわかり理解がぐっと深くなる。もう一つは、その大岡信が谷川俊太郎、H・C・アルトマン(オーストリア)、O・パスティオール(ルーマニア)といった詩人たちとともに1987年に試みた「ファザーネン通りの縄ばしご ベルリン連詩」(岩波書店から本になっている)を三人の作曲家が共同作曲で音楽化しようとする国立劇場のプロジェクト(3月5日/6日の公演「詩歌をうたい、奏でる ─中世と現代─」で発表される予定)について、制作者の石橋幹己氏(国立劇場)と作曲家の桑原ゆう・Marc David Ferrum・川島素晴の三氏のお話・文章で制作の内側を語っていただいた。非常に興味深く読んでいただけるものと思う。
それから昨年末に弊社が刊行した『幻花 ─音楽の生まれる場所』(燈台ライブラリ4)の著者の、作曲家・佐藤聰明さんのインタビューを載せる。これも回答をご執筆いただいた。単行本と併せてご味読いただきたい。アメリカの音楽財団から作曲を依頼されたバイオリン協奏曲のエピソードは昨年の世界および佐藤氏ご本人の状況をよく物語るものだ。
巻頭詩は、川口晴美、新倉俊一、大木潤子、大橋英人、永方佑樹の5名の方々(とりわけ川口作品は昨年来の感染症災禍を反映して鋭く、お見逃しなく)。巻頭連載詩はこの号から和合亮一さんが担当(3回の予定)、この長篇詩は我々をどこに導くのだろうという不思議の念とともに辿っていただきたい。俳句は柴田千晶、短歌は野樹かずみの両氏の作品。
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(池田康)