
今号の特集は「恐怖の陰翳」。2020年からのコロナウイルス跋扈、そして野村喜和夫さんの対話シリーズの候補の一つとして広瀬大志さんとの恐怖対談が挙がったこと、さらに表紙を飾るオブジェに今回國峰照子さんの「悪夢」をもちいる予定だったので、これらから総合して、ほぼ必然的に「恐怖」という特集テーマになった。「陰翳」とつけたのは、はっきりした恐怖だけでなく、その予兆や可能性、潜勢態をも視野に入れたいという考えからである。野村・広瀬対談「恐怖と愉楽の回転扉」(広瀬さんがとても張り切って語って下さった)を軸として、エッセイや詩を神山睦美、望月苑巳、生野毅、瀬崎祐、田中庸介、愛敬浩一、山田兼士、細田傳造、八覚正大、添田馨、田中健太郎、北川朱実、浜江順子、菅井敏文、今井好子の諸氏に寄稿していただいた。さらに海埜今日子さんの連載掌編も恐怖のテーマにあたると思われたので特集の枠の中に入れた。記事の隙間には「恐怖十七景」と称して小説や詩作品などから恐怖シーンを引用した。
巻頭詩は中本道代、宇佐美孝二、高田真、二条千河、高橋馨のみなさん。短歌は、山川純子さん、そして蝦名泰洋さんの遺作。和合亮一さんの連載詩は今号が最後となる。
新倉俊一先生の追悼としては、八木幹夫さんの追悼詩「フェト・シャンペエトル」のほか、詩集『ビザンチュームへの旅』の書評を宮沢肇さんが執筆して下さっている。
なお、この号から美術コラム頁の担当が宇田川靖二さんから柏木麻里さんに替わった。
ぜひご覧いただきたい。
(池田康)