ウクライナで戦争が始まっている。超大国の絶対的権力者が魔王になったらどうなるかという〈ありえない悪夢の仮定〉のはずのことが現実に起こりつつあって、それを目撃することになるのだろうか。
ここ数日、ルキノ・ヴィスコンティ監督の「ルートヴィヒ」を見ていたが(ワーグナー関連作品。上映時間は4時間に及び、映画というよりもヴィスコンティがきわめて明確な夢物語を見ているというかんじ)、王と呼ばれる存在は、やろうと思えば放恣はいくらでも可能で、自身の精神、心を節度をもって平らかに英明に保つことがいかに難しいかを強く印象づけられる。私は謎だ、他人にとってだけでなく自分にとっても、とルートヴィヒ王(バイエルンの君主)は死の直前に独白する。
王侯でなくても、選挙によって地位についた長であっても、任期があまりにも長くなると、精神の健康・健全を損なうことなくすぐれた国政の船頭でいつづけるのは至難にちがいない。
(池田康)
2022年02月26日
ありえない悪夢の仮定の……
posted by 洪水HQ at 08:03| 日記