この世で一番居心地のいい場所はどこだろうか?
自分の家、自分の部屋、という回答が多いと思われるが、それを省くとしたら、どうだろうか。
思いつくままに挙げてみよう。たとえば由緒ある温泉の露天風呂。あるいはハイキングで2時間歩いてちょっとした山頂に到達して岩に腰かけ水筒の水を飲んで景色を見渡すとき。あるいは気のおけない友達数人との会食(隣のテーブルの声がうるさくないことは絶対条件)。あるいは快適なライブハウス、アルコールを少し体に入れて音楽を聴くとき。あるいは昔の和風の家で大きな庭があって縁側に坐って日向ぼっこをしながら鳥の鳴き声を聴くとき……
いずれも悪くないが、正解は、空豆の莢の中、なのではないかと昨日今日空想している。
数日前、食料品店で特売の莢入り空豆一袋を買ってきて、茹でて食べているのだが、空豆の莢の中はとても上等な白い綿状のクッションが敷き詰められていて、心地良さそうなのだ。この中に入って、空豆の木の枝にぶらぶら揺れるのは、とても気持ちいいのではないだろうか。馬鹿なことを言うなと言う人は一度空豆の莢を裂いて中を見てみるといい。気持ちが落ち込んだときなど、自分は空豆の莢の中にいる、宙で風に揺れている、あったかくて雨にも濡れずとても静か、と空想したら、少し気が楽になりそうだ。
ちなみに、子どもの頃はおいしさがよくわからない、どちらかというと苦手、という食材がいくつもあるものだが、私にとって空豆はその一つだった。今はうまいうまいと食べている。
(池田康)
2022年05月20日
一番居心地のいい場所
posted by 洪水HQ at 19:25| 日記