2022年07月04日

みらいらん10号

みらいらん10表紙画像002.jpgみらいらん10号が完成した。176ページ。表紙オブジェは國峰照子さん作「歩行」。
今号の特集は「西脇順三郎 世界文学としての詩」、果敢にもこの巨大な高峰に挑戦した。今回も監修的役割を果たして下さった城戸朱理さんの発案が出発点になっているが、個人的には、何年か前に神保町の古本祭りの折に買い求めた『西脇順三郎全詩集』(筑摩書房、1963年)をいよいよちゃんと読む時が来たかという怯えと奮い立ちとが混ざり合った心境だった。この『全詩集』未収録の晩年四詩集も蒐集して謹読した。
特集の柱は吉増剛造・城戸朱理両氏の対談「西脇順三郎をふたたび考える」で、吉増さんの話の中で「生垣」や「女の舌」といった語が目立つ形で出てきたのでサブタイトルを「生垣・女の舌・異語の声」とした。この対談はホテル・ニュー・カマクラで行われ、吉増さんの疑義や事実確認に対して城戸さんが即答するという場面も印象的だった(対談の後の歓談も非常に愉しいものであった)。
さらに贅沢にも往復書簡企画が二つ並ぶ。一つめは、野村喜和夫・杉本徹両氏による「ポエジーのはじめに散歩ありき」、二つめは城戸さんの詩を英訳している英文学者の遠藤朋之さんと城戸さんとの「世界文学の視点から西脇順三郎を考える」。どちらも西脇順三郎の本領を問いただす生彩にみちた対話となっている。
そしてエッセイをご寄稿いただいたのは、石田瑞穂、岩崎美弥子、山内功一郎、山崎修平、田野倉康一、ヤリタミサコ、神泉薫、菊井崇史、カニエ・ナハ、広瀬大志のみなさん(広瀬氏は詩の形)。さまざまな角度から巨魁西脇順三郎に迫って下さった。
西脇順三郎は苦手という方もぜひ今回の特集をご覧いただき、それぞれにこの大詩人への入口を見つけていただければ幸いだ。
巻頭詩は小池昌代、愛敬浩一、岡本勝人、原利代子、岡田ユアン、萩野なつみの六氏。巻頭連載詩は今号から渡辺玄英さん(12号まで)。巻頭短歌は前川斎子さん(「日本歌人」編集人)。
それから嶋岡晨さんの連載詩だが、コーナー名変更となった。すなわち「深夜の詩・夜明けの歌」。刷新された舞台で新たなモードの詩が読めることを歓迎する。
巻末のジャンル別コラムに、この号から愛敬浩一氏がテレビドラマ担当で加わっている。氏は映画やドラマの評論も旺盛に書き、単行本も出していて、その批評は独自の視点に貫かれ、長年培った定見の上で颯爽と自立している。そして洪水企画から今年、〈詩人の遠征〉シリーズで『遠丸立もまた夢をみる』『草森紳一の問い』の二冊を刊行した。どちらも異色のタッチの活気ある文芸評論となっているので是非ご覧いただきたい。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 14:13| 日記