白石かずこさんが14日に逝去されたとのこと。93歳というご長寿ではあったが、ここ数年は体調思わしからざるところもあり音信がなかったことが寂しいことだった。私は「洪水」誌をやっていた頃、4号(2009年)で「白石かずこの航海」という特集を組み、たくさんお話を聞かせていただく機会があった。かけがえのない、非常に貴重な経験だったと回想する。その中でとりわけ印象に残るのは、何度か耳にした「世界はどんどん悪くなっている」という言葉だった。その頃は(私としては)あまりピンとこないご見解だったが、直観的に世界の動向をそう見て(感じて)おられたのだろう。今になると、世界を見渡し、社会を眺めて、白石さんのあの言葉に共感せざるを得ない部分が非常に多い。恐るべき予言的洞察だ。
朗読も旺盛にされて、何度も聴いた。巻物に自筆で(筆と墨で?)書いた原稿をほどきながら、読み終えた部分を垂らしながら床に折り重なり乱れさせながら読んでいくスタイルは独特で迫力があった。フリージャズの演奏者と共演する場合も多く、ジャズとの共演はレコードにもなっているくらいだから、いつもの装身具を身につけるくらいの遠慮のない関係だったのだろう。下北沢のレディジェーンでの朗読会はトランペットの物狂おしい叫喚とともに特に思い出に残っている。
初期から晩年までとても力のこもった詩を発表されてきたが、中期では法外な長編詩に取り組まれた。上述の特集では詩集『一艘のカヌー、未来へ戻る』(1979)や『砂族』(1984)をとりわけ熱を入れて読み、特別の感銘を受け、論じたものだった。ご作品のいくつかは英訳されているが、これらの二詩集がちゃんとした外国語訳になっていたら、もっと本格的に「世界的詩人」として認識されていたのではなかろうかという思いは消し難い。
とにかく、立派な文業を残された詩人・白石かずこに万感の敬意を払い、ご恩に心からの感謝を表し、ご冥福を祈りたい。
ドラムが大音響で
天が割れ 豪雨が 音豪雨が
わたしの内なる血の海
この薔薇色に輝く海へ 脳天うちわり
そそぎこむ
鳥が鳴く
極楽鳥である
愉悦である
笛である 愉悦である 鳥たちの
愉悦の 狂気の鳴き声である
もう
これ以上 鳴けないほど鳴きつづける鳥たちのポエジーである
………………白石かずこ「一艘のカヌー、未来へ戻る」より
(池田康)
2024年06月20日
白石かずこさんご逝去
posted by 洪水HQ at 11:57| 日記
