野村喜和夫(敬称略、以下同じ)がディレクターとして3月5日にシアター代官山で催された「詩脳ライブ」は、詩と脳を結び付けて考えるというきわめて刺激的な試みであり、興味深いテーマであったが、出演者に恵まれて、成功裏に行われたと言えると思う。
全体の構成は、次のようだった。
「朗読パフォーマンス」 岩切正一郎、川口晴美、城戸朱理
「藤井貞和に聞く 〜詩はいつから脳に入り込んだか〜」藤井貞和、(聞き手)野村喜和夫
「コラボレーションT」 野村喜和夫、コンパニア・バレー・フラメンコ・エル・スール
「コラボレーションU」 ヤン・ローレンス、田中庸介
「シンポジウム 〜詩的脳/脳的詩の可能性〜」 ヤン・ローレンス、岩切正一郎、川口晴美、城戸朱理
最初の朗読では、それぞれの個性が感じられた。
次のインタビューでは、藤井貞和の発想のおもしろさが十分引き出された。
コラボレーションTでは、野村喜和夫の詩の朗読とダンスが見事に調和していた。
コラボレーションUでは、ヤン・ローレンスはベルギー人で、詩人にして神経科学者であり、田中庸介も詩人であるとともに細胞生物学者であるので、共通点の多いふたりのコラボレーションは過去にあまり例の無いユニークさと知的レベルの高さと科学的な色合いをもっていたと思う。
ヤンは田中が「ネイチャー」誌に発表した英語の論文の言葉をもとに英語の詩を作って見せた。田中はそれを日本語に訳して見せた。
また、田中の朗読した詩もユーモラスでよかった。
ヤンがそれほど高いレベルではない日本語で作った詩も神経科学者らしい独自の視点が感じられてなかなか印象的だった。
「あたまのないへびのあたまのことをかんがえているじょうたい」といったイメージがくりかえされるうちにふしぎな世界に連れて行かれてしまったような感じがした。
ただ、日本人のわたしには、もう少し短くまとめてくれたほうが詩の中身に集中しやすいとも思った。
最後のシンポジウムは、詩と脳についての導入的な話が展開されて興味を惹かれたが、深い掘り下げは今後に期待されるといった感じを受けた。
総じて、得るものが多いイベントだと思ったが、特に、ヤン・ローレンスが外国人として日本人のわれわれをはっとさせる発言や発表をしてくれたことが最大の収穫だと思った。(南原充士)
2009年03月06日
詩脳ライブ
「詩脳ライブ」について
posted by 洪水HQ at 23:53| Comment(2)
| 来信
ヤンさんは独特の諧謔のツボをもったパフォーマーでしたね。
藤井さんの話は面白そうだったけど時間が短くて、とくに「アスペクト」というレベルのことがわからなかったのでもう少し説明してほしかったところです。
最後のシンポジウムでは絵画について論じてくださると面白かったのではと思いました。
以上が私のごく短い感想です。
南原さんとはいろいろ話せて楽しい一夜でした。