2009年04月07日

杉中雅子歌集『ザ★カ・ゾ・ク』

ザ★カゾク画像100dpi.jpg洪水企画の2冊目の単行本が完成した。杉中雅子氏の第一歌集で、書名は『ザ★カ・ゾ・ク』。杉中さんは短歌会ぱにあに所属し、歌歴は19年、今回がはじめての作品集だが、ビギナーの段階はとうに過ぎ、かなりベテランの域に近づいているといってもいいかもしれない。短歌という詩型のありがたいところは、形が表現を締めるから、ある程度実力のある人が作っていれば何首かは確実に強く動かされるいいものが見つかるし、ときにはこちらの心に半永久的に刻まれるような優れた歌に出会うことができる点だ。この歌集は、タイトルが示す通り、家族の話を中心に、主に自分の生活の属目風景を詠んでいる。跋を書かれた秋元千恵子氏によれば、この「カ・ゾ・ク」は人類愛的境地まで視野にいれているということだ。
書誌情報、帯に紹介されている作品はこちらから:
http://www.kozui.net/frame-book.htm
そのほか、本文から:
心弾むふるさとなれど父母は亡き この世の部屋にあかりを点す
夫に抱くこのジェラシーは少しずつわれを離れゆく息子のせいか
ほの暗き茶室に亭主待つわれと共につぼみのままの芍薬
銀行の階段に焼きつく被爆者の人形(ひとがた)を見し通学生われ
被爆した校舎で学びし幾たりか人魂見たとう地下室ありき
病む友にわれはもてなし受けにけり故郷広島の筑前煮の味
半生を互みに語る泣き笑い癌病む友もほろ酔い気分
近況を語らう友の受話器から宮島線の遮断機の音
新茶淹れる後姿 帯は麻の葉の模様きりりと貝の口結び
父母見るや あねおとうとら川の字に幼き日のごと眠れる姿
蝉しぐれの坩堝の中にわれさえも忘れしわれの日常さえも

今回はぴったりスケジュール通りにできあがり、しかも著者サイドも版元サイドも満足のいく出来栄えで、うまくいったと思っている。はらはらする場面はいくつかあったのだが、なんとか乗り切れてよかった。巌谷純介氏による装丁はカラーの使い方が鮮やかで、手に取っていただいた方には好評のようである。(池田康)
posted by 洪水HQ at 18:16| Comment(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: