山崎広光さんが新しい詩集を出した。『孤児の肖像』(砂子屋書房)。山崎さんは私の郷里の大学関係の先輩で、初めてお会いしてからもう15年くらいは経っているだろうか、親しくしていただいている。今回の作品は、私一個のおぼろな印象にすぎないが、私が知り合ってからこれまでの間での最高作ではないかという印象を受けた。「春の終わり」「一つのあいた席」「孤児の肖像」の三篇の長い詩からなる。この長さは渾身作という表現を使いたくなる規模だ。とても漲るものがあり充実している。
私は私のX写真をたずさえて広場の真ん中に立つ
ここでは誰もが真ん中に立つ、誰でもその人の立つ位置が
真ん中であり、四方八方から言葉が押し寄せる
美しい言葉も、良い言葉も、真なる言葉も
押し寄せる、だが届かない
配達人は途方にくれてぶつぶつと独り言
私はもう一つたずさえてきたものをお腹のあたりに確かめる
さびしい骨のお写真にちょっと礼をして
言葉が波となって寄せてくるなか
起爆装置のスイッチを入れる
(「孤児の肖像」より)
こんな詩が読みたい、こんな詩が書きたい、という(私の勝手な)理想をかなりよく実現しているような気がして、うれしい。多くの場合、作品集をもらっても、えてしてそれが自分の嗜好や欲求とひどくちがう方向性をもっていて、そうするとせっかくだから読ませてもらおうと励むことは励むのだが、なかなか読みづらいものだ。この『孤児の肖像』はそういったことはなく、流れるように読んでいけ、多くの次元・観点でおおいに共感でき、幸せなものを感じる。すばらしいものをいただいたと山崎さんと天に感謝したい。(池田康)
2010年01月09日
山崎広光詩集『孤児の肖像』
posted by 洪水HQ at 14:37| Comment(0)
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