
特集冒頭の画家・加納光於さんのインタビューは、御自身の文章もとりまぜて、濃密に瀧口修造との交わりを語りだしており、釣りのエピソードなどまことに鮮やか、新作の話もとてもビビッドな響きがこだましている。聞き手の岩崎美弥子さんのリズム感ある質問者としての舵取りもご覧いただきたい。作曲家の湯浅譲二さんのインタビューは松井茂・土渕信彦・岩崎美弥子の各氏と私の四人で行った。超ジャンルの創造の冒険、実験工房の活動の勢いよく前進する熱気が目の前に再現されるようで、武智鉄二と実験工房が組んだプロジェクト(「月に憑かれたピエロ」「綾の鼓」など)の生成のいきさつも非常に興味深い。武満徹や秋山邦晴の仕事についてのコメントも内部からの視点ならではの鋭さで、これも必読だろう。「ホワイトノイズのためのイコン」を中心に電子音楽についての議論も非常に発見が多かった。ほかに、馬場駿吉氏が瀧口の俳句的表現について、林浩平氏が瀧口の晩年取り組んだ「諺」作品について、萩野恭一氏が瀧口の若い頃の短歌作品について、論じており、それぞれ瀧口へ向かう意想外の角度をひらいている(萩野論文では新発見の短歌が紹介掲載されており注目!)。瀧口修造研究家の土渕信彦氏による『詩的実験』の主要な作品についての詳細な考察、そしてその参考資料として『詩的実験』から洩れている当時の詩作品も抄録している。
そのほかの記事としてはピアニストの高橋アキさんのインタビュー(ピアニストとしての歩み、お兄さんの悠治さんとの関係や、フェルドマン、ケージとの親交の話など、語り口が生彩に満ちていてとても刺激的)、作曲家の川島素晴・山根明季子ご夫妻の「往復書簡」(真剣勝負!)、白石かずこさんの北園克衛についてのエッセイ(近頃世田谷美術館で開催された「橋本平八と北園克衛展」に食い込んだ内容となっている)などがある。
なお、この7号から、定価を1050円(税込み)とさせていただいた。
本日納品した山野楽器銀座本店3階ではすでに店頭に出ているはず。ギャルリー東京ユマニテでも販売中、「加納光於展」は明日が最終日。横田茂ギャラリー(港区海岸)、田村書店(神保町)にも置かれている。その他の書店は、正月前後には出る予定だ。店舗リストは洪水HPトップページで確認していただきたい。(池田康)