2011年03月19日

東京混声合唱団第224回定期演奏会

18日、東京混声合唱団の上記演奏会を東京文化会館小ホールにて聴く。客は時期が時期だけに3〜4割程度の入り。最初に、指揮者の田中信昭氏が、こんな大変な状況のときにコンサートを開催するのは心苦しく、悩んだが、励ましもあり、やることを決断したと語った。仕事はしなければならない。生活のために、しなければならないし、生命の名誉のために、しなければならない。また、歴史をより有意味に創っていくために、しなければならない。誕生した曲を立派な演奏で世に出すということは、価値ある仕事であろう。
曲目は、野平一郎「進化論」、篠田昌伸「火曜日になったら戦争に行く」、西村朗「大空の粒子」。野平氏の作品は、生命史とダーウィンの進化論を記述した散文テキストを合唱曲に仕立てるという一風変わったもの、作曲者自身の言葉によれば「無謀な児童合唱曲」(体調不安定でちゃんと聴けなかった、残念)。篠田氏の作品は、詩人の渡辺玄英氏の詩を用いている。現代詩という一癖ある言語作品を巧みに料理し面白い形の合唱曲に仕上げる篠田氏の手腕は、計算がピタリと合っている感じがして、相当なもの。西村氏の作品は、一転して、もっとデモーニッシュな動き方をする。佐々木幹郎氏の詩作品に作曲しているのだが、詩を奥へ奥へと読み進む幻想的興奮の渦が音楽化されている。2009年に初演された曲だが、初演のときよりも、演奏者に曲がよく見えてきているのか、より精妙に有機的に構築されているように思われた。
地下鉄は正常に動いており、帰途になにも問題はなし。この日本屋でたまたま見つけて買った、冨原眞弓著『ムーミンのふたつの顔』(ちくま文庫)を読みながら帰る。2005年に出た本を文庫化したもの。冨原氏の文章は健康飲料水のようで、すらすら気持ちよく読める。トーベ• ヤンソンがイギリスの新聞に四コマ漫画を連載した経緯など、興味深い。「ムーミン冬シリーズ」を解説した箇所が、精神の不安と孤独感を語って、じんわり染み込んでくる感じがあった。(池田康)
posted by 洪水HQ at 09:55| Comment(2) | 日記
この記事へのコメント
ご来場ありがとうございます。またすてきなご感想ありがとう。東京混声合唱団はプロ合唱団ですからちょっとやそっとでは公演をやめるわけにはいかないのです。新作の演奏会、3人とも曲想が
ちがっていてお楽しみいただけたでしょうか。
 今回の事件は日本にとって,世界にとって、文化や芸術にとってたいへんなことだと思っております。不安と、このままでは終われないという思いと。音楽はこういうとき何ができるか、無力ではないはずです。
公演制作 小林信一
Posted by 小林信一 at 2011年03月22日 16:49
コメントありがとうございます。
とても意欲的なプログラム、感銘を受けました。
今後とも新鮮な音楽の創造を期待しております。
ますますのご活躍を!
Posted by 池田康 at 2011年03月24日 14:05
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