2011年04月07日

南原充士詩集『インサイド・アウト』

nanbara-insideout.jpg南原充士さんが新しい詩集を出した。南原さんはこのところ年一冊のペースで上梓しており、非常に創造力旺盛である。今回は、前作の『タイムマシン幻想』の濃厚なフィクション性の充溢から一転して、ストレートな抒情詩が中心となっており、帯には「等身大の抒情詩篇」とある。すなわちいい意味で肩の力が抜けているということでもあり、身近な日常経験に材を取った多くの詩篇は過剰な表現欲動にわずらわされることがなく率直な共感をもって快調に読むことができる。他方、なかには文明の深部まで視線を届かせようとする認識の強い刃をもった作品もあり、たとえば「裸の壁」は

 風も無いのに風車が回る
 変わり絵の細長い板がくるくると回転する
 猛暑の中を運ばれていった兵士のシルエット
 だまし絵の中へ消えていった重戦車
 オセロゲームの盤側に対局者の姿は見えない
 沖合いの空母から無人機が飛来する
 流れ出た機械油が砂漠を黒く汚す
 爆弾は破壊しつくした敵地になおも降り注ぐ
 野戦病院に収容された兵士の記憶の中で
 巨大なフレスコ画が色を失い
 裸の壁となって立ち尽くす

と短いけれど強く迫ってくるものがあり、また「ソフトタッチ」「ハードタッチ」という対になっていると思われる詩篇は今回の大震災にも通じるような先鋭なカタストロフィの感覚を示している。ぜひじっくり読んでいただきたい。(池田康)
posted by 洪水HQ at 09:34| Comment(0) | 日記
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