2011年06月29日

MUSIC TOMORROW 2011

28日、NHK交響楽団による特別コンサート「MUSIC TOMORROW 2011」を聴きに行く(東京オペラシティコンサートホール)。このコンサートのありがたいのは1000円という格安のチケットがあることで、それを利用して、3階の席で聴いた。ややステージが見にくい。曲目は、尾高尚忠「フルート小協奏曲」、アンリ・デュティユー「コレスポンダンス」、西村朗「蘇莫者」。指揮はスペイン生まれのパブロ・ヘラス・カサド氏。尾高作品は有名なフルート協奏曲の初期形ということ。音楽に19世紀的典雅さも感じられる。独奏フルートの軽やかな疾走と飛翔は聴いていてとても気持ちよい。この天上的な曲が戦後すぐの時期に書かれたというのだから、驚きだ。フルートはN響の神田寛明さんの演奏。デュティユー氏は1916年フランス生まれの作曲家。題名の「コレスポンダンス」は往復書簡のことで、リルケの「銅鑼」という詩篇、プリトウィンドラ・ムカルジーの「宇宙的舞踏」、ソルジェニーツィンがロストロポーヴィチ夫妻に送った手紙、そしてゴッホが弟のテオに送った手紙が音楽のテキストとなってソプラノ独唱によって歌われる。最後のゴッホの部分がもっとも強く迫ってくる感じがあった。歌詞となっているゴッホの文章には如実に彼の血が感じられる。ゴッホの世界を音楽にするというのはこれまで聴いたことがなかったので、ただならぬ経験と思った。ソプラノはカナダのバーバラ・ハンニガンさん。西村朗さんの曲は昨年の尾高賞を受賞した作品で、伝統舞楽とオーケストラを合体させた曲。「蘇莫者」は、伝統舞楽曲で、聖徳太子の御霊をまつる法要「聖霊会」の主要演目のひとつなのだそうだ。ステージの中央に緑の四角い舞舞台を設え、その左右や奥にオーケストラが座る。天王寺楽所の三人の舞人が出演し伝統衣装をつけて舞を演じた。絢爛たる大曲で、響きも精妙、形もメリハリが効いていて、作曲の構想力がすみずみまで行き渡り、貫いている。圧倒される思いで聴いていた。この曲に課題があるとしたら、舞踊といかに合わすかという点だろう。この曲を完全に活かすためには、舞人に創造的名人が必要のように思われた。作曲者はあるいは拒むかもしれないが、コンテンポラリーダンスのようなジャンルの実力者に踊ってもらうのも面白い結果になるのではないかと想像した。この日の客席は非常に熱気があり、拍手も歓呼も一曲目からすごかった。N響もこういう演奏会をやると、通常のクラシック名曲の演奏会とは違った刺激、手応えを覚えるのではないだろうか。司会は白石美雪さん。(池田康)
posted by 洪水HQ at 17:27| Comment(0) | 日記
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