2011年07月31日

詩の筏#04開催

IMG_2965.JPG30日午後、荻窪の角川庭園幻戯山房で「詩の筏」#04を開催した。今回は、前半が野村喜和夫さんの講座、後半が小島きみ子さんの新しい詩集『その人の唇を襲った火は』をめぐっての批評の会。野村さんの講座はタイトルが「詩と哲学の交差路をもとめて」、マルティン・ハイデガーとルネ・シャールとパウル・ツェランのそれぞれの歩みの交差を探る話。ハイデガーとシャールは長年の友人で、かたやツェランはハイデガーを敬慕していた。しかし第二次世界大戦でのそれぞれの立場をみると、シャールはフランスのレジスタンスでドイツ軍と戦い、ツェランはユダヤ人として収容所に入れられ、ハイデガーはナチスにある時期加担したことがあり、それぞれまったく違うのに、どうしてつながることができるのか。そのあたりを考えようとする試みで、シャールの無垢な大地性、ハイデガーの民族性を擁した大地性、ツェランの宙に浮かんでいるような大地性の欠如、という各人の特質の指摘もあり、また大震災、原発事故への言及もなされ、非常な視野の広がりと可能性をもった講義となった。
後半の小島さんの詩集を論ずる部分では、まず作者の小島さんが制作意図を述べたのだが、そこで愛の行為、道徳を行為することとしての詩作、という大胆な考えが表明され、それについて様々な意見が交錯した。また、なぜ散文詩に取り組んだか、カタカナの花の名前の頻出はなんなのか、冒頭の作品の「仙境都市」の背後になにがあるのか、等々の点について作者の考えや秘密の一端が明らかにされ、詩集に対する理解の照明が刷新したようで、外からの評の楔も数多く打ち込まれ、意義のある会となった。「絶望の底で、言葉が希望を手にするためには、言葉はもっと深く野望することです」(エウメニデス 40号)と語る小島さんのますますの活躍を期待したい。
参加者は、有働薫、松尾真由美、中井ひさ子、海埜今日子、南原充士、榎本櫻湖、八潮れん、沢聖子、生野毅、簑田知佐、の皆さん。荻窪駅からかなり歩く場所で天気が心配だったが、なんとか傘を差さなくても大丈夫な日和となり、安堵した。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 12:01| Comment(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: