2011年11月14日

11日から13日にかけての行動と見聞

11日から13日にかけて東京に出向き、多くの予定をこなした。
11日午後は、詳細は省くが、洪水次号のためのとても大事な取材で、うまくいくか、準備不足はないかと、3日間のうちでもっとも緊張した2時間だった。無事完了。
夕方は、飯田橋北のトッパンホールに行き、「第6回JFC作曲賞本選会」コンサートを聴く。大胡恵、福島諭、今村俊博、金澤恵之、木山光、宮内康乃、牛島安希子といった若い作曲家の方々の作品。室内楽規模の編成で、こういう形の方がオーケストラ曲よりも新しい音楽の特色がよく出るように思われた。審査員は三輪眞弘、中川俊郎、野村誠の三氏。演奏会終了後、ロビーで公開選考会を40分ほど行ったのだが、受賞者が決まる所までいかず、後日に持ち越しとなった。その成り行きは見ていて面白かったし、交わされた意見も興味深かったが、結論を出す方向になかなか向かわないのには苛立った人も少なくなかっただろう。曲それぞれに感想はあるが、まだ決定はなされていないようなので、記さないでおく。
その夜は、新宿のカプセルホテルで泊まる。ロッカーの狭いのには全く困惑した。あとで、大きな荷物は受付に預ければいいのだと気づいたのだが。この手のホテルは男性と女性に分れているようで、かなり特殊な雰囲気。
12日午前は、ある詩集制作に関する打ち合わせ、この本は来年はじめごろになるだろうか、動きのある本になりそうで、楽しみである。
午後は、新百合ケ丘にある川崎市の施設の会議室で、「詩の筏」#05の開催。今回は、渡辺みえこさんに「近・現代詩における「私」―比較文化的考察から」というテーマで、また有働薫さんに「1952年生れの2人のフランス詩人、モルポワとカエール
―モルポワ『青の物語』、カエール『息の埋葬』」というテーマで、それぞれお話しいただくのがメインのプログラム。渡辺さんのほうは、第一人称の「私」をめぐる議論だが、大学で一年間かけての講義にもなりそうな膨大な内容を45分に凝縮したという恐ろしいもので、レジュメを眺めただけでも目眩がする。勉強になった。有働さんのお話は現在形で活躍する二人のフランスの詩人の作品の紹介で、自ら親炙し翻訳してきた詩人達のことだけに、即座に核心に導いて下さった。翻訳された作品が翻訳に思えないような気がしたのが不思議だった。質問や意見もいろいろ出て、議論の場としてもよかったのではないか。出席者は13名。
その夜は、会場近くに住んでおられる桜井さざえさんの御宅に泊めていただく。新宿のカプセルホテルとは真逆の、親密なもてなし、静寂さにみちた時間が有難かった。
13日の日曜日の午後は、やはりトッパンホールで、「湯浅譲二 合唱作品による個展 第1回」というコンサートを聴く。湯浅譲二さんの合唱曲全作品を今年と来年の2回に分けて演奏する、その第一回目で、「アタランス」、「擬声語によるプロジェクション」、「音楽(おとがく)」、「ふるさと詠唱」、「声のためのプロジェクション―音響発生装置としての」、「芭蕉の俳句による四季」、「息」、「歌 A SONG」といった曲目が、ヴォックスマーナ、男声合唱団クール・ゼフィール、混声合唱団空(くう)、女声合唱団暁、成蹊大学混声合唱団といったグループによって演奏された。指揮はこのコンサートの首謀者でもある西川竜太氏。湯浅さんの音楽世界の幅の広さを示す、非常に立派な、充実した演奏で、聴きにきた方々は満足されたのではなかろうか。私はこの日会場で雑誌を販売していたため、それに気をとられて人に挨拶したり話をしたりするのがちょっとおろそかになり、残念な面もあった。来年の第2回も楽しみである。
夜は、土渕信彦さんに連れられ神保町のカフェ&ギャラリー「クラインブルー」での高橋敬子さんの個展「紫の庭から不在の庭へ」の最終日のぎりぎりの時刻に行き、ビールを一杯飲んだあと、さらに早稲田奉仕園スコットホールに行き、木部与巴仁氏の「トロッタの会14」を聴く。構成が盛りだくさんで非常に長い演奏会となった。橘川琢「祝いの花」、清道洋一「恋の歌」、今井重幸「対話と変容」、宮崎文香「虹」「花の森」、オリヴィエ・メシアン「時の終わりのための四重奏曲」の記憶、伊福部昭「蒼鷺」、ロルカ「カンシオネス[スペインの歌]」、田中修一「ムーヴメントNo.5」、堀井友徳「朗読と室内楽のためのポエジー 蝶の記憶」、酒井健吉「Concerto da camera」という曲目が並ぶ。もちろん専門の作曲家たちが作っているのだから、あるいはきれいに、あるいは力強く、あるいは刺戟的に、出来上がっているのだが、音楽の骨がさらされるという点では、メシアン、伊福部とならんで、今井重幸氏の曲があり、それから田中修一さんの新曲に筋の通った強い印象を受けた。作る手と生まれる音楽との間合いが非常に正確に見取られ捕まえられているという感じがした。それから、木部氏がロルカによるスペインの曲(民謡?)を歌ったのだが、その歌いっぷりなかなか堂々としていて驚いた。曲に合わせてだろうけれど、いつも和服の彼がスーツを着ているのも初めて見て、これも(非常に決まっていて)びっくりだった。
そして東京駅へ。深夜バスで帰る。まことにお疲れ様の三日間だった。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 20:41| Comment(0) | 日記
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