2012年01月04日

林浩平著『テクストの思考』

hayashi-textkenkyu.jpg春風社から昨年二月に出た上記の本、「洪水」9号でできれば紹介したいと、かなり読み進めてはいたのだが、詩集を主にして筆を進めていったこともあり、残念ながら及ばなかった。それでさっそくこのブログで報告したい。
A5判で400ページに迫る浩瀚な評論集で、国文学関係の場所に発表されたものが中心となっているように見受けられる。論考の対象は、木下杢太郎、森鴎外、佐藤春夫、宮川淳、萩原朔太郎、瀧口修造、富永太郎、樋口一葉、芝不器男、丸山薫、中原中也、折口信夫、といった文学者たち。朔太郎とか鴎外といった相当にメジャーな対象にも独自な視点から果敢な論の展開が試みられているが、読んでいてなんとも鮮明で魅力的に感じたのは、丸山薫、芝不器男といった、あまり論じられるのを目にしない詩人たちの章で、丸山の「物象」、不器男の「ユートピア」、それぞれレンズの焦点がぴたりと合った論じぶりで、めざましかった。冒頭に置かれた木下杢太郎論も力強く、この文学者の仕事に親しんだことがこれまでなかったので余計に興味深く読んだ。タイトル「「硝子」の詩学」が示す通り、ガラスという物質が近代社会で帯びることになった魅力、イメージの光彩を細やかに追求していて、なるほどと思わせられる。この論の延長でデュシャンの「大ガラス」も論じるならどうなるかと、夢想した。
以前うかがったところによると、もともとは中世の短歌が文学研究の中心的対象だったということで、この本でも折口信夫や穂村弘が論じられているが、短歌に関する評論もさらに読んでみたいものである。
昨年末に開催した「オリーヴ会議2」にも参加して下さった林さん、そのときに世田谷文学館の萩原朔太郎展にちなんでのロック・コンサート!の模様も聞かせていただいたが、今年もますますのご活躍を期待したい。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 15:37| Comment(0) | 日記
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