八覚正大さんがはじめての詩集『朝一の獲物』を洪水企画から刊行した。八覚さんは長年小説を書いてきて、新潮社の新人賞なども受賞されているが、詩は近年になって足を踏み入れた新たな創作活動ジャンルである。ほんの一年のうちにこれだけの成果を生み出せるのは、やはり言葉を紡ぐ仕事にずっと携ってこられたからだろう。詩集は21篇から成り、いまは亡き両親のこと、交わってきた人たちをモチーフにしたもの、自分自身の幼い頃の体験、最近の出来事や思いを種にしたもの等々、多彩な作品群だ。八覚さんは「文藝学校」の講師でもあり、同僚・先達の長谷川龍生氏、黒羽英二氏のアドバイスも得て、今回の作品集となった。長谷川氏が跋文を書かれている。詩集タイトル「朝一の獲物」については、「序詩」に「今朝も/死なずに/目覚めた私が/立ちあがって/ふたたび日常のルールを/歩み出すまでの束の間/ワナにかかってきた/言葉を/掬いとってみた」と述べられているが、次のフレーズも参考になるだろう。針だけついた糸
が沈んで行く──
手の感触
獲物がかかれば
己の心臓とは別の鼓動が 伝わるはず
それは脳髄と股間を
両撃する
密猟の光景だ
(「船底の海」より)
帯には、最も力強いフレーズとして次の詩行を引用した。
茄子の実の表皮に写る
その湾曲した世界の像を
もし いまこの世界を
本当に実感したいなら
食べろ
まるごとの
世界を
(「茄子の実の」より)
カバーの絵は、作者の友人でもある画家・野崎晶さんの作品で、本文中にちりばめられている8点のカットも野崎氏による。定価1800円+税。ご覧いただければ幸いである。
(池田康)

丁寧に読んでいただけ、八覚さんも喜ばれると思います。
小熊さんの今後の詩作にも期待しています。