2012年02月19日

八覚正大詩集『朝一の獲物』

asaichinoemono-image.jpg八覚正大さんがはじめての詩集『朝一の獲物』を洪水企画から刊行した。八覚さんは長年小説を書いてきて、新潮社の新人賞なども受賞されているが、詩は近年になって足を踏み入れた新たな創作活動ジャンルである。ほんの一年のうちにこれだけの成果を生み出せるのは、やはり言葉を紡ぐ仕事にずっと携ってこられたからだろう。詩集は21篇から成り、いまは亡き両親のこと、交わってきた人たちをモチーフにしたもの、自分自身の幼い頃の体験、最近の出来事や思いを種にしたもの等々、多彩な作品群だ。八覚さんは「文藝学校」の講師でもあり、同僚・先達の長谷川龍生氏、黒羽英二氏のアドバイスも得て、今回の作品集となった。長谷川氏が跋文を書かれている。詩集タイトル「朝一の獲物」については、「序詩」に「今朝も/死なずに/目覚めた私が/立ちあがって/ふたたび日常のルールを/歩み出すまでの束の間/ワナにかかってきた/言葉を/掬いとってみた」と述べられているが、次のフレーズも参考になるだろう。

 針だけついた糸
 が沈んで行く──
 手の感触
 獲物がかかれば
 己の心臓とは別の鼓動が 伝わるはず
 それは脳髄と股間を
 両撃する
 密猟の光景だ
 (「船底の海」より)

帯には、最も力強いフレーズとして次の詩行を引用した。

 茄子の実の表皮に写る
 その湾曲した世界の像を
 もし いまこの世界を
 本当に実感したいなら
 食べろ
 まるごとの
 世界を
 (「茄子の実の」より)

カバーの絵は、作者の友人でもある画家・野崎晶さんの作品で、本文中にちりばめられている8点のカットも野崎氏による。定価1800円+税。ご覧いただければ幸いである。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 13:09| Comment(2) | 日記
この記事へのコメント
 朝早くからスミマセン。私のようなものまで、詩集『朝一の獲物』を送っていただきありがとうございます(八覚さんに言うべきか?)。まだ、最初の作品しか読んでいませんが、観念的な詩と思いましたが、最初の巻頭詩は、プロローグなんですね(字も他の詩より小さいし)。中味を見るのが楽しみになる、導入詩と思い至りました。
Posted by 小熊 at 2012年02月22日 04:44
コメントありがとうございます。
丁寧に読んでいただけ、八覚さんも喜ばれると思います。
小熊さんの今後の詩作にも期待しています。
Posted by 池田康 at 2012年02月26日 08:51
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