2012年05月08日

嶋岡晨詩集『終点オクシモロン』

shuten-oxymoron.jpg嶋岡晨さんの新詩集『終点オクシモロン』がこのほど洪水企画から出た。A5判上製で168ページの堂々たる体躯の本になっている。タイトル、「終点」とは、電車の運行の終着駅をイメージしていただければよく、帯の「終着駅からの一人旅がいまはじまる」という文句が、込められた思いを表している。「オクシモロン」とは「撞着語法」という意味で、本文中の注で「冷酷な親切」とか「賢い馬鹿」とかいった例を挙げて説明されている。つまり「終点」は抒情的位置、「オクシモロン」は本書で柱とされる方法論、ということになるだろうか。嶋岡氏は近年『影踏み』『愉しい人生の草野球』『愛しい日日のレクイエム』とそれぞれ性格の違う非常に充実した詩集を発表してきているが、本書もそれに列なるみごとな充実ぶりで、書き溜められた作品のたんなる集積ではなく、スタイルの統一を意識し、強固なポリシーをもって詩集全体をまとめているところがさすがで、6章に分けて並べられた45篇の詩の重量感はただごとではない。是非お読みいただきたいと思うが、ここには冒頭に収められた「「自由」への旅」を引用紹介する。

 出発点がすでに到達点
 夢を引っぱる機関車のあえぎの 妖しさ
 レールはどこにもない
 熱く灼けた過失 停まらない車輪──

 出口のない世界一長いトンネルだ おまえは
 運ばれる疲れた精神たちの 創る時間地獄
 なだれこむ眩しい季節 天使の雪景色の熱さ
 手荷物は たちまち溶ける

 国境は溶ける記憶 地図の裂け目に
 拡げられ 伸び縮みする 終着駅「自由」。

巻末に収録されている「コンプラキコスの弁明 ─〈わたし〉という詩論の遍歴─」も必読。本体2200円+税。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 12:38| Comment(0) | 日記
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