
巻末の編集後記の書き方がおかしかったようで、杉浦康平氏も執筆に加わっているように読めるが(その可能性もあることはあったのだが)、そうではなく、この特集企画のそもそもの発端が杉浦氏との会話だったという事情を指すと受取っていただきたい。
前号からはじまった「詩で描く新世紀地図」は今回第2回目、撰に細見和之さんに迎え、新たな7作を選んでもらった。すなわち福間健二、高階杞一、季村敏夫、小池昌代、八重洋一郎、廿楽順治、清水あすかの諸氏の作品が並び、細見さんの解説がつけられている。熟読いただきたい。
新連載はピアニストの井上郷子さんの「蔦に鳥、花に蝶、音楽に…」、作曲家との交わりを通してその作曲家の仕事を考究する試みで、第1回は松平頼暁氏を取り上げている。今後も楽しみ。
「The Creating Players」のコーナーではAyuoさんにインタビューを行った。高橋悠治氏の息子さんで、実に多彩な音楽活動をしている人。その思想的背景まで詳しく語っていただいた。今月14日には明治大学駿河台キャンパスでハワイの神話伝説を題材にした近作「ペレ」の公演がある(参加無料、洪水HPのイベント情報頁を参照して下さい)。
また外国詩を紹介する「VERSE BEYOND」のコーナーが新設され、たなかあきみつ氏の翻訳により、ロシアのマリア・スチェパーノヴァ(1972年生まれというからまだ若い詩人だ)の作品を紹介している。
もう3回目になっているシリーズ「瀧口修造残像」は、土渕信彦氏の論考(前号の続き)と、オリーヴ会議の第2回目、出席者は土渕氏に加えて、空閑俊憲、林浩平、岩崎美弥子の諸氏。千葉市美術館の展覧会についてやシュルレアリスムと精神分析とのかかわりなどを論じている。
今年2月に初演された、佐々木幹郎さんが台本を書き西村朗さんが作曲した室内オペラ「清姫─水の鱗」についても「音楽はうごく」のコーナーでかなり詳しくレポートしている。新しいうたを創る会による上演。
それから、今年1月に亡くなった新井豊美さんの追悼文を渡辺めぐみさんに書いていただいた。
その他の内容については、こちらを:
http://www.kozui.net/kz10.html
盛りだくさんですので、是非ご覧下さい。書店には一週間ほどしたら出ると思います。
(池田康)